百首歌奉りしに、春の歌
山たかみ峯の嵐に散る花の月にあまぎるあけがたのそら
二条院讃岐
新古今和歌集春下130
【口語訳】
山のあまりにも高いところにあるものだから、
その峯の嵐に散る桜の花びらが
雲や霞のように月を覆い隠してしまう、
ああ、そんな、明け方の空だよ。
(訳:梶間和歌)
山たかみ:山が高いので
あまぎる:天霧る。雲や霧などで空一面が曇る、の意。
「あまぎる」と表されるほどの桜吹雪とは
どれほどのものでしょう。
桜吹雪を透かして
うっすらと明け方の月光の洩れるさまも
思い浮かべましたが、
「あまぎる」となると
もっともっと濃く、厚く、月を隠すほどの
あまたの花びらを思うべきでしょうか。