千五百番歌合に
ながめわびそれとはなしにものぞ思ふ雲のはたての夕暮の空
源通光(みちてる)
新古今和歌集恋二、1106
【口語訳】
いかんともしがたいこの恋に心は沈み
夕暮れの空を眺めている。
天に住む人を恋うわけではないけれども、
当てもなく眺められてしまう
雲の果ての夕暮れの空。
(訳:梶間和歌)
本歌が
夕暮は雲のはたてに物ぞ思ふあまつそらなる人をこふとて
古今和歌集恋一、484 詠み人知らず
とされ、
本居宣長の著した『新古今和歌集』の注釈書
『美濃の家づと』でも、
“それとはなしに”とは
「本歌のやうに、天つ空なる人をこふとにはあらでといふ意なり」
とされているようです。
ゆえに訳にも
「天に住む人を恋うわけではないけれども、」
という言葉を添えました。
通光の自讚歌だそうで。
正直、本歌は『古今集』らしいつまらない歌だ
と感じられてしまいますが。
つまらないと私には見える本歌を
良き歌に本歌取りし、新たな命を吹き込んだ例
ではないでしょうか。