保存にむく塩と調味にむく塩との違い
一昨日のブログでちょこっと能登の魚醤(ぎょしょう)、「いしる」のことを書きましたが、魚醤(ぎょしょう)ってご存知ですか?
日本版ナンプラーといったほうがわかりやすいかもしれませんね。発酵調味料です。
イワシやイカ、サバなどをたっぷりの塩の中に塩漬けし、自然に発酵させたときに生まれる調味料です。
そもそも、塩というのは、食品の保存のために使われました。
これからの冬の季節に出てくる北海道の荒巻鮭や、新潟・村上の塩引鮭、信州の塩ブリ、しょっぱすぎるほどの塩気。
これは、鮭を長期間、保存するための知恵と技術ですよね。
ところが魚醤っていうのは、塩漬けしたのに、その魚が保存されず、身が溶けてしまうってことなんです。
塩漬けしておいたのに、身が溶けてしまうって、実は、当たり前ではなく、変なことだと思いませんか?
武州の業得の塩は「物をよく調味するけれども、保存にはむかない」、上総の塩は「潮が盛んで気は猛く、塩も厚峻で食物の保存によい」という記述です。
冷凍庫も冷蔵庫もない時代、保存に適した塩というのは、とても大切なものでした。
そして、保存に向かない塩は、調味には使われても、あまり大量には使われなかったわけです。
どういう塩が保存に適していたかというと、塩化ナトリウムの割合が多ければ多いほど、いいわけです。
塩化ナトリウムの主要な働きは、消毒、殺菌ですからね。酵素の働きを抑え、乳酸菌などの善玉菌、悪玉菌など菌の育成も抑えるわけです。
江戸時代の本草学の本「本朝食鑑」にあるように、よく調味することと、保存することとは、相反することなわけです。
よく調味する、おいしくなる塩、というのは、塩化ナトリウムだけでなく、各種のミネラルが存在し、そのミネラルが酵素を活性化し、タンパク質や炭水化物を分解して、うま味や甘味を生む塩です。
塩漬けしているのに、乳酸菌などの善玉菌が育って発酵する、その発酵が進んで腐敗に行かず、うま味になる、というのは、さらにその塩のミネラルバランスが奇跡的なものでないとありえないわけなんですよ。
つまり、ナトリウムやマグネシウムが発酵に適したミネラルバランスの「わじまの海塩」というのは、冷凍冷蔵技術や流通がよくなり、強い塩で長期間、保存する必要がなくなった現代ならではのお塩ってことなんです。
冷凍冷蔵技術や流通がよくなり、これだけ保存がよくなったので、濃い塩味になるほど塩を使う必要がなくなったのです。
一夜干し、干物、塩辛、漬け物・・・。ご飯のおかずにも、酒の肴にも欠かせないものですが・・・、現代の塩、「わじまの海塩」で、ほどよい塩味とうま味をお楽しみくださいね。