塩の味の個性と多様な機能性 by 「クロワッサン 815号」
雑誌「クロワッサン 815号」(2011年10月25日号・10月8日発売・マガジンハウス発行)は、「レシピに書かれていない、料理の基本」の特集でした。
その中に、料理研究家・大庭英子さんの「醤油・塩・砂糖・みりん・酢・味噌 おいしく仕上げる使い方」が載っています。
塩のコーナーの副題は、「単に味を決めるだけではない、塩の多様な機能に注目!」というもの。
塩について、基本的でかつ最新の見解が書かれていますので、解説を加えながら、引用してご紹介します。
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1997年の専売法廃止以後、日本では国内産、海外産を問わず、製法も形状もさまざまな塩が簡単に手に入るようになりました。
それとともに、塩にはさまざまな味があることも今ではよく知られています。
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今では知られているのであって、ほんのちょっと前までは知られていなかったということなんですよ。
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塩は原材料別に海塩、岩塩、湖塩に分類されますが、塩の中で最も種類も味も豊富なのは海塩です。
海水を原料とする海塩には、日本近海の海水を使う純国産塩と、海外から原料を輸入して日本で加工した再生加工塩、そして海外産の海塩の3種類があります。
どれも海水で作られるのだから味に大差はないと思いがちですが、海水の濃度や成分は地域によって違いがあるうえ、気象条件や製法も異なるため、当然、それぞれに個性ある味が生まれます。
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そうなんですよ。「塩は塩、どれもしょっぱいだけ」ではないんですね。
2009年の調理学会のシンポジウムでは、「塩はどれも同じ」と発言されていた有名料亭の料理長さんもいらっしゃいましたし、2010年には、塩業界の権威者という方でさえ、塩によって味は変わらないと新聞紙上でおっしゃっていたこともあるんです。
このような一般向けの雑誌に、さらりとこのような内容が書かれるのは、塩に対する認識の「変化」なんですよ。
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料理に塩は欠かせません。ひとつまみの塩が料理の味を決めてしまうことは誰もが知っています。
だからこそ、種類豊富な塩の中から自分の舌にかなった塩を選び、上手に使いこなすことは、まさに料理の要といえるでしょう。
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そうですね。塩を選ぶ時代です。
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ところで、塩には、料理の味つけ以外にも見逃せない機能がいろいろあります。
野菜を色よくゆでる、アク抜きする、素材の臭みを消す、うまみを引き出す、保存性を高める…。
そんな中から、ここでは塩の持つ、素材のうまみを引き出し、保存性を高める性質を利用した塩豚をご紹介しましょう。
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「塩がうまみを引き出す」というのは、このブログを読んでいらっしゃる読者さんにはすっかりおなじみの機能ですが、塩化ナトリウムだけの精製塩や、マグネシウムを含んでいない岩塩では、最後に「塩 こしょう」レベルの味付けをするもの、という認識がこれまでのものだったんです。
タンパク質分解酵素を活性化させるマグネシウムを含む海塩でなければ、特に、肉のうまみを引き出すなんてことは実現できなかったんですよ。
そして、雑誌には、「塩の持つ優れた機能を利用して作る、塩豚」の作り方が紹介されています。
ハーブなども使わず、豚肉の肩ロースの塊りに、肉の重さの4%の量の粗塩を刷り込むだけの簡単な作り方です。
この塩豚を使って、「塩が引き出した肉のうまみと、ほどよい塩加減を生かしてシンプルに料理」として、「塩豚とれんこんの炒め煮」「ゆで塩豚の手巻き風野菜巻き」「塩豚と豆のトマト煮込み」のレシピも紹介されていますよ。
どうぞ、「わじまの海塩」を使って、マグネシウムをバランスよく含む海塩が引き出すタンパク質のうま味、味わってみてください。


