震災後の塩業界の動向(福島県での製塩撤退と天日塩の輸入) | 橋本三奈子のSalt Revolution(わじまの塩に魅せられて)

震災後の塩業界の動向(福島県での製塩撤退と天日塩の輸入)

震災後、日本の塩業界に動きがあったので、他社情報になるのですが、記録として書いておきます。

青いパッケージで販売されている食塩は、イオン交換膜製法で作られている塩ですが、財団法人塩事業センターで販売されています。

輪島の塩に魅せられて大手IT企業を飛び出した女社長の奮闘記-食塩
これは日本の海水を使って作られていますが、工場は7つあります。販売者名のうしろの数字が、「製造所固有記号」になっていて、その一つ「01」というのが、が福島県いわき市にある日本海水株式会社の工場でした。

輪島の塩に魅せられて大手IT企業を飛び出した女社長の奮闘記-食塩の固有記号


津波と原発問題で打撃を受けた福島県の工場では、震災後、操業を停止していました。

以下は、2011年8月11日の日経産業新聞の記事です。

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福島での製塩撤退

エア・ウォーターは、10日、子会社の日本海水が小名浜工場(福島県いわき市)で手がけてきた製塩事業の再開断念を決めた。


国内市場で5割のシェアを握る同社の主力拠点だ。

塩は取水した海水をイオン交換膜で濃縮してつくる。東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故の影響を見極めるため、被災設備の復旧を見合わせていた。

再開には多額の費用がかかることなどから、最終的に撤退を決めた。

(略)
塩の供給確保に向け、兵庫県と香川県にある工場をフル操業させるほか、オーストラリアなどからの輸入で対応する。
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塩事業センターは、財務省所管公益法人ですので、これは1企業としての経営判断という簡単なものではなく、財務省、政府の判断も入っていると考えられます。

なお、こちらの日本海水様、日本国内での食用塩の安定自給をコンセプトに、 イオン交換膜法による製塩会社で組織されている「社団法人 日本塩工業会」を、すでにこの4月に退会されてしまっています。

また、以下は、少し前6月27日の日本経済新聞のニュースです。

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三井物産、オーストラリアで塩増産

三井物産はオーストラリアで塩田事業を拡充する。

約120億円を投じ、自社保有する2塩田の生産能力を2016年までに段階的に約2割増やす。

中国やアジア新興国の経済成長で、塩田を電気分解してつくるカセイソーダなど工業用途のほか、品質の高い食塩の需要が高まっていることに対応する。


三井物産は豪州西部に、自社で運営する「オンズロー」と「シャークベイ」の2塩田を持つ。

(略)
塩田事業は海岸部の広大な土地で、海水を天日干しで濃度を上げ約2年かけて塩を生産する。イオン交換膜で化学的に結晶化するのに比べ生産期間が長いが、コストが安い利点がある。

(略)
特に 「シャークベイ」産の塩は品質が高く、日本の漬物や水産物など食品加工用にも使われている。

三井物産はオンズローの増産分を主に需要の伸びる中国の工業用に拡販するほか、シャークベイの塩を日本や中国の食品市場に売り込む。

国内では出資先の塩最大手、日本海水(東京・中央)の小名浜工場が震災で被災し操業再開のめどが立たず、シャークベイから年10万トン近い供給支援を当面つづけていく。
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オーストラリアで作られる塩は「天日塩」という分類になります。

大手食品会社の加工食品も、塩化ナトリウム99%以上というイオン交換膜製法の塩の利用から、海水の微量ミネラルを含んだ天日塩への利用に、今後、大きくシフトしていくことと思います。

「天日塩 使用」と書かれた商品が、ますます増えていくことでしょうね。

未曾有の震災は、原発依存から新エネルギー利用を考えるきっかけとなり、日本の食用塩のミネラル成分の大きな転換も図られることになりました。日本国民の健康問題にも影響を与えるかもしれません。

でも、命の源の塩を、海外産に頼り切っていていいの?という問題がありますよね。

弊社は日本海の海水、日本国産の塩として、がんばらねば。

それにしても、天日干しでの塩の生産は2年かかるということ・・・。「わじまの海塩」の製塩プラントは、それを室内で約10日間で再現してしまいます。

屋外に置かれている食品の安心安全が疑問視されている昨今、この製塩プラントも価値あるものになるのではないかとひそかに思っています。