「人間は心も体も食べ物に呼応していくもの」 by 辰巳芳子先生 | 橋本三奈子のSalt Revolution(わじまの塩に魅せられて)

「人間は心も体も食べ物に呼応していくもの」 by 辰巳芳子先生

小学館「美味サライ 2011年夏号」。

輪島の塩に魅せられて大手IT企業を飛び出した女社長の奮闘記-美味サライ2011夏

美味サライ「世界通販」食材図鑑に「わじまの海塩」を紹介していただいた号ですが、この本誌巻頭に、辰巳芳子先生と佐藤隆介氏の対談が載っていました。

辰巳芳子先生は、「良い食材を伝える会」「確かな味を造る会」「大豆100粒運動」会長。
佐藤隆介氏は、池波正太郎の書生を勤め、食を題材に文筆業を営むという方。

興味深い対談でしたので、抜粋してご紹介します。敬称略で失礼いたします。

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辰巳:
今回の大震災と大津波は日本人の生活のあり方、ことに食に対して、さまざまなことを教えてくれたように思います。

テレビのニュースで見ると、避難所では、おにぎりなどが配られ、それを新聞紙の上で召し上がって・・・胸が痛みましたね。

救援の人たちも一生懸命炊き出しをなさったということだけど、「とりあえず」が終わったら、
なんとかタンパク質を入りまぜ、ご飯をあげたいと思いましたね。

佐藤:
一時的に飢えをしのぐことと、人間らしく正しく命を養うということは、まったく別の問題ですからね。

辰巳:
今度の大災害と緊急の救援活動をニュースで見ながら私が考えたのは、ほかでもない「まるで被災された方のような食事を、普通に都会で暮らしている人がしている」ということです。

およそ人間らしい食べ方とはいえない、心の琴線に触れることがない食事。それがいま都会ではあたりまえのように
なっているのよ。

佐藤:
じつは先生、被災された方の食事を見ながら、私も同じことを考えていました。コンビニのおにぎり、出来合いの惣菜、菓子パンにペットボトルの飲料・・・これは今日びの都会の若者たちと同じじゃないかと。

(略)

辰巳:
私なら、こんな哀れな食べ方をして、それできちんと仕事ができるのか・・・本当に愕然としましたね。

佐藤:
食べることは生きること。生きることは食べること。その根本的な生命の仕組みをきちんと教育していないから、死なない程度に食べるだけのモラトリアム人間が増えてきたんじゃないでしょうか。

知り合いの若い編集者に一生懸命頑張ってよく働くのがいるんですけどね、イマイチ仕事の出来がよくない。

で、その若者にお前のエネルギー源は何だときいたら、ナントカメイトという、いわゆる栄養補助食品。

これだけで一日分のビタミンと鉄分とナンヤラが摂れて、しかも低カロリーだと言うんです。それで私が一喝した。

「栄養補助食品やらサプリメントやらで暮らしている奴は、サプリメント程度の仕事しかできないんだ!たまには極上のビフテキ食ってビフテキ並みの仕事をしろ!」

毎日食べてきたものが、人の体を作っているのですからね。

最近つくづく思うのですが、人間、しっかり食べた分
しか頭も体も働かない。食べたもの以上の仕事はできない。これが私の持論です。

(略)

辰巳:
人間は心も体も食べ物に呼応していくもの。心の琴線に響く食事によって、いのちに花を咲かせ、実を結ばせようとする日々の営みーそれを生活というのです。

その営みを通じて、生物としての「ヒト」が、やがて実存的な「人」になる。「ヒトが人になる」ために食はあると思います。


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いかがですか?

会社員時代のお昼休みの風景を思い出してしまいました。

いい仕事をしている人、しっかり食事をしていたなあって。

体と心をつくる食。大事なことですね。

飢えをしのぐだけのような食事だけでは、きちんとした仕事はできませんね。

そして、被災地の方々の食事、栄養についても、一日でも早い改善を祈ります。