辰巳芳子先生の「塩の効能」 in 『手しおにかけた私の料理』 | 橋本三奈子のSalt Revolution(わじまの塩に魅せられて)

辰巳芳子先生の「塩の効能」 in 『手しおにかけた私の料理』

辰巳芳子先生の「辰巳芳子がつたえる母の味 手しおにかけた私の料理」(1992年発行・婦人之友社)。

輪島の塩に魅せられて大手IT企業を飛び出した女社長の奮闘記-手しおにかけた私の料理


辰巳芳子先生のお母様・辰巳浜子先生の著書「手しおにかけた私の料理」(1960年発行・婦人之友社)に、辰巳芳子先生が解説を加えた復刻版です。何刷も増版を重ねている名著です。

この本の中に、「調味料にもこだわりをもって」という章の中に、「塩」についての記述がありますので、引用して、ご紹介します。

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●●塩

塩は調味料の始めであり終わりであります。なぜなら単に味覚以上に、塩は人間の生命と直接つながっているものです。ですから直接体にとり入れる塩は必ず天然塩を用いましょう。

一般に使用している精製塩は99%が塩化ナトリウムで、捨て使いするには適していますが、塩として頼る塩ではありません。

●塩の効能

塩は調味料や貯蔵用に使うのみでなく、調理過程のテクニックとして微妙な使い方をします。

・魚介類をたて塩で洗う、又は塩水につけ、身をしめる
・魚に塩をふり、浸透圧で水分を呼び出す
・魚介を茹でるときに塩を入れる
・塩ものの塩だしに塩水を使う「呼び塩」
・豆腐を茹でるとき塩を少々入れるとやわらかくなり、スがたたない、日もちする
・青菜を茹でるとき塩を入れるのは、養分の流出をふせぎ、あくを押え、野菜のうま味をひき出すため
・パスタや豆類を茹でるとき塩を入れるのは、養分の流出をふせぎ、下味を添える
・調味料の味をひきたてる。甘味をいかす、酸味をひきたてる
・魚、肉を焼く場合の散塩 味を逃さず、味をそえる、焦がさないために用いる場合もある
・漬けものなどに用いる野菜、果実のあくを塩水でぬく
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辰巳芳子先生は、お母様から家庭料理を学び、宮内庁大膳善寮で修行を積んだ加藤正之氏にフランス料理の指導を受け、イタリア、スペインなどで西洋料理の研鑚も重ねた方。

辰巳芳子先生の著書には、塩として、フランスのゲランドの塩という記述が出てくることがあるように、上記の塩の効能は、精製塩ではなく、海水塩の働きです。

とくに、「養分の流出をふせぐ」という働きは、塩化ナトリウムではなく、マグネシウムの働きによるものです。

ところで、「調味料にもこだわりをもって」という章の始めには、次のような記述もありました。

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よい調味料を使わなければならない理由は、知らず知らずのうちに、毎日々々調味料の影響を受け、
おいしいまずいはともかく、身体に与える影響は、良くも悪くも大なるものがあるからです。

さらによい調味料で、願うように素材がいきてくるとき、格別のよろこびを感じるものです。
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おっしゃる通り!

このブログでもご紹介しましたが、5月30日の「良い食材を伝える会」のパーティ の場で、命に直結した食の大切さを訴えている辰巳芳子先生に、「わじまの海塩」を「たいへんよい塩」とスピーチしていただけたことは、とても、うれしいことです。