ピチットの干物と天日干しの干物の違い | 橋本三奈子のSalt Revolution(わじまの塩に魅せられて)

ピチットの干物と天日干しの干物の違い

6月26日、東日本料理学校協会主催の「全国料理学校協会 教員資格認定研修会」。


浜内千波先生や脇屋友詞先生と並んで講師となった中道肇の「干物について」の実技講演の内容をご紹介します。


輪島の塩に魅せられて大手IT企業を飛び出した女社長の奮闘記-研修会プログラム


中道肇のプロフィール。


輪島の塩に魅せられて大手IT企業を飛び出した女社長の奮闘記-中道肇プロフィール


以前、このブログ でご紹介したものです。石川県の輪島沖50kmにある舳倉島(へぐらじま)で育ち、無人島で暮らし、船乗りになり、漁師となり、水産加工業をしていたことがある中道肇、魚を知り尽くしている男です。


東日本料理学校協会・事務局長の新居文樹先生との対談形式のような講義でした。


新居先生の「干物は、天日干しが一番おいしいのではないのですか?」という質問に対して、中道の答えは・・・。


天日干しで美味しい干物ができるのは、温度が18℃~20℃で、湿度60%以下の環境。これにあてはまるのは5月だけ。それ以外は、干せば干すほど魚がいたんでくるだけです、と。


浜辺でも夜に干しているそうで、観光地で、もし昼に天日干しをしていたとしたら、それは観光客相手のダミーの干物です、ということでした。


輪島では、夏の間、魚が腐ってしまうので、干物を作ること自体が禁止されているそうです。


天日干しをしてハエと戦ったり、乾燥室を使ってみたり、熱風にあてたり、灰干しをしたりして、いろいろな干物の作り方を研究した結果、1年中、この環境を誰でもどこでも簡単に作れるのが「脱水シート・ピチット」を使う方法に行きついた、ということでした。


研修会のテキストにも載っているのですが、「ピチット加工と従来加工の干物の比較」として、以下の違いがあります。


輪島の塩に魅せられて大手IT企業を飛び出した女社長の奮闘記-ピチット干物と天日干し干物の比較
                 出典: 「健康食 ひもの」 1989年6月30日 発行
                      著者   太田静行、西 相子、李 秀清
                      発行所 社団法人 農山漁村文化協会


ピチット加工は、天日乾燥法よりも、過酸化脂質が少なく、腐敗の目安となるアンモニア態窒素も少ないんですよ。


ピチットシートは、魚に密着するために外気と触れにくく、冷凍焼け・霜の付着・脂の酸化が発生しにくくなるという研究結果が学会発表されています。


①調理化学Vol.27 No.1(1994)   「冷凍イワシの脂質酸化と嗜好に及ぼす脱水シートの影響」 
②油化学 第39巻 第6号(1990)  「浸透圧脱水による魚類干物の製造の際の脂質の変化」


脂質の酸化を気にしていらっしゃる方は、「ピチット」で一夜干しを作ってくださいね。