「塩は、塩味をつけるためではなく、出汁を膨らませるために入れています」
食べログの「2009年 東京のベストレストラン1000軒」に選ばれた、麻布十番「薮原十区」のご主人・細越さんから伺った話をもう1つ。
ご主人は、「体液と同じ塩分濃度(0.8%)以上には味付けしない」と断言していて、醤油や味噌を使うと、とんがった味になってしまうので、出汁と塩だけで十分とおっしゃっています。醤油は香りづけだけに使っているそうです。
焼き魚も、魚の脂の乗りや水分を見て、計算した塩加減をしているので、お客様からリクエストされるまで醤油は出しません。
野菜も、ダシと塩で煮るだけなので、とても薄味。でも、素材の味を感じて、体にやさしい、ほっとした感じがします。
かつおと昆布の出汁に塩を入れると、「ある塩加減のときに、出汁が甘くふわ~っと膨らむ感じがする」そうな。
でも、それ以上、塩を入れると、今度は、出汁が死んで、しょっぱくなりすぎる、ということです。
だから、「僕は、塩は、塩味をつけるためではなく、出汁を膨らませるために入れているんです」ということでした。
う~ん、奥が深い。
鎌倉女子大学名誉教授で医学博士の成瀬宇平先生から、「かつお節は、実は半発酵」と伺ったことがあります。だから、発酵を促すミネラルバランスの「わじまの海塩」を入れると、ぐぐっと、かつおだしのうま味が引き立つんですね。
ご主人は、それを「だしが膨らむ」と表現されたのかもしれません。お客様からお話を伺うと、とても、勉強になります。「その表現、もらいます!!」ということも多いです。
