あれから

あまり大きな喧嘩はせずに、新年を迎えた。


いよいよ結婚が少しだけ見えてきたところでの

私の実家への初めての挨拶。



何も心配することはないと思った。


直人が家を気に入ってくれればと思った。




でも、心配は反対で


お母さんが直人を気に入らなかった。



1月末にはお母さんとの電話が決定的で


私は一気に体調を崩した。




その一週間後、

とうとう耐え切れずに直人に電話の一部始終を吐いた。



伝えた分、少し軽くなったけど、

直人は案の定、怒った。



さらに、

酔っ払って帰ってきて

いつのまにか泥酔した直人を起そうと体を持ち上げたら

壁にぶつかってしまって

酔った直人は




私の鳩尾を殴った。





はじめて殴られた。


びっくりしてパニックになった。



それから胃腸炎を2週間。




心も体も枯れた。




直人は罪滅ぼしのように

一週間私の家に通い

お粥なり、鍋なり

体に優しいものを作った。


煮た野菜で胃もたれを起す私に。


寝る前の薬と水で気持ち悪くなる私に。



私は、半分ほど、生きる気力を亡くしていた。

ウサギの桃太郎の面倒も

私がいなくなっても直人が一人でできるように、


飼育の仕方を小さなノートにまとめた。

遺書もそのとき一緒に書くつもりで。


でも、

意外と書き残すことはなかった。

桃太郎さえ生きていれば。

それでいいと気づいた。



首は簡単に吊れないか、

ネックウォーマーでドアノブにかけてみたりした。


そのとき、

桃太郎が心配そうに私の周りにまとわりつく。


分かってるのかな。




他にもいろいろ調べたけど、

簡単に死ねないことが分かった。



だから、とりあえず考えるのを辞めた。




それから直人の転勤地で物件を探し、

迷った挙句、将来2人で住んだときにちょうどいい

3LDKを借りることに決まった。



やっぱりいろいろあったけど私との将来のこと

ちゃんと考えてくれてた。




嬉しかった。



やっと穏やかに過ごせた3月。





地震のとき心配してすぐ帰ってきてくれた。

明るく励ましてくれた。


こうやって、やっぱり支えられてるんだと思った。


今までの思い出の写真のデータをDVDにしてくれた。

とても凝ったもので、すごく愛情を感じた。

ちゃんと、桃太郎の写真も入っていた。



何度も見て、何度も泣いた。



3月3連休を一緒に過ごし、明日の仕事のためまた別々の生活に戻った。


その後、洗車をスタンドに頼み、

寒空の下、暗い夜道を歩いていると、

ふと空しいような、切ないような、寂しさに襲われて、



これから遠くに引っ越してしまうんだな・・・と実感した。



会いたい時に簡単に会えた距離。

職場が一緒だっから、廊下でぱったり会うのもよくあった。



これからは・・・





会いにいくから。



応援してるから。




もっと強くならなきゃな。


まだまだ引越し作業あるけど、

一緒にがんばろう!