2015年12月、抗ガン剤が終了し半年後の定期検診へ向かった。この半年間の検診では怪しいものは見つからず、腫瘍マーカーの数値も正常(元々でる方ではなかったが)、順調にきていた。きていたつもりだった。しかし、胃の右側の痛みは一向に収まることはなく痛みの強い日は痛みで目が醒めることもあった。しかし、波はあり、なんともない日も多かった。そんな不安を抱えてはいたが今までも何もなかったし、大丈夫だろうと楽観視していた。

いつものように造影剤を使ってCT、エコーと検査を進め、最後に先生による結果発表の流れだった。あれ?先生渋い顔?何かやっちゃった?嫌な予感の通りに先生から告げられたのは「腹膜播種への転移、再発です」との言葉だった。

んー。痛みもあることから怪しいとは思っていたがついに捕まった。しかし、初めて聞く腹膜播種という単語の意味がわからず実感が湧かなかった。そしてどういうものかの説明を受けた。先生いわく、腹膜播種というものは、お腹にある腹膜に出た癌だと。腹膜に出た場合、今見えている癌だけでなく複数の癌があり、手術をしてひとつ取っても意味はなく、モグラ叩きのような状態になるとのことで手術はできないとのことだった、そして治療法としては抗ガン剤しかないと。しかも抗ガン剤を使って癌を消すことはかなり難しく、ステップ的にキツくなる抗ガン剤を使い続けるとのことで上手くいけば治るかもしれないが、そうでないにしても延命治療を頑張りましょうということだった。

待て待て!え?何?何の話?この人は何を言ってあるの?意味わかんない!どういうこと?
あまりの衝撃に頭がぐらぐらした。

そして、とにかくすぐにでも始めましょうと言われ、動転もしていたためか、思わずとりあえずやるしかないかと思いお願いしますと予定を組んで部屋を出た。

部屋を出てすぐ恐怖がこみ上げ、涙が溢れた。当然受け止めきれていなかった。すぐ受け付けに行けないほど涙が溢れ、しばらく人気のないところで気持ちを落ち着けさせるために泣いた。

車に乗り込み帰ろうとするも、嫁、両親に伝えることが痛いほど申し訳なく、また泣いた。低分化型の癌でリンパ節転移もあったため再発の可能性はあるとわかっていたものの、抗ガン剤をやったことによって余程のことがない限り自分は大丈夫だろうとタカをくくっていた。家族へは今までも検診のあといつもすぐ電話をして結果を報告していたのでその日も当然待っていた。一旦気持ちを落ち着かせ報告の電話を入れた。再発してしまったこと、やっかいなとこに出てしまったことを告げ詳しくは後ほどと電話を切った。