人間失格 (集英社文庫)/太宰 治
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斜陽・人間失格・桜桃・走れメロス 外七篇 (文春文庫)/太宰 治
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生誕100年という事で太宰治の特集番組や小説が映画化されて、それまでどういうわけかあまり気にならない作家だったのですが、メディアに触発されてというか、洗脳されてというか、書店で「人間失格」を手に取ってみたのです。


しかしこの「人間失格」というタイトルは素晴らしいキャッチコピーにも匹敵する名タイトルですね。

不器用で世渡りが下手で他人が信用できず作り笑いを浮かべてなんとか世間や他者と一日一日をやり過ごす自己嫌悪の毎日の自分には的を得た、まさに自分の事を言われているようなタイトルだと前々から思っていました。

それではなぜ今まで読まなかったかと言うと、どうも古臭い作家に思われたからです。夏目漱石とか芥川龍之介とか森鴎外とか、確かに文豪かもしれないけれど、どうも文体や言葉が古臭くてこの世代の作家は読む気がしないのです。

ところが、読んでみるとまさに自分と共感できるところが多々「人間失格」の主人公には存在するのです。主人公は「葉蔵」という名ですが、ほぼこの境遇や物語は太宰自信の自伝的小説と言っても過言ではないでしょう。


金持ちのぼんぼんで大人になってもまともな仕事につかず、中途半端に政治活動の真似事をして、安易に自殺未遂を繰り返し、エロ漫画を書いてシノギ、嫁を寝取られ、煩わしいことから逃れる為に酒に溺れ、麻薬に溺れ、挙句に精神病院に入れられる主人公。たしかにろくでもない人間です。


しかし美男子だからか、女にはモテまくる。うらやましいねぇ。


終盤の隠遁生活のシーンは腹を抱えて笑えるほどのエピソードがあり、人生なんて喜劇だよ、と言っているようにも読み取れました。


読み終わって、「人間失格」とあるけれど、もっと最低な人間はいっぱいいるんじゃないのか?と思いました。連続殺人犯とかね。そんな犯罪者に比べればこの主人公なんてかわいいもんだと思いました。


自虐的な太宰の世界観が長年に渡って読者を増やしてきた魅力なのかも知れません。


あなたは「人間合格」ですか?