【二宮のこと】




暫く一人で考えてたら、
カズが 横から顔をのぞかせた。




「なにかんがえてんの?」

「…カズのこと」




それだけ言うと、全部察したみたいで
一気に話してくれた。




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俺ね、親どっか行ったからじーちゃん
ばーちゃんに育ててもらったのよ。


でもじーちゃんは早くに死んじゃって。
高校に入学した頃にばーちゃんが
入院しなきゃいけなくなって。


そしたらさ。金かかるじゃん。
ばーちゃん入院しないとか言い出すし。


たまたま、さ。
近所のおにいさんが水商売やってるって
いうのは知ってて…そのお兄さんに
事情話して、聞いてみたのよ。
「お兄さんの仕事、俺には出来ない?」


お兄さん、チャラい格好してたのに
髪ばっさり切って、スーツ着てさ。
学校の先生に成りすまして。
「安心してください、ちゃんと面倒見ます」
とか言ってくれて。

本当はありもしない奨学金があるとか
いっぱい言って。うちのばーちゃん
信じて、入院してんだけど。

お兄さんが金貸してくれるって言った
んだけど、それは自分で稼ぐって言って。

お兄さんやってたのが…そういう、さ。
風俗だったんだよね。
本当は未成年ダメじゃん?
それでも俺やるって言って。
もう3年かなぁ…。



バイトが週3なのはね、体力と
あと稼ぎすぎも考えてくれてて。
「ちゃんと勉強する時間作ること」
「高校生らしい生活すること」
って約束で入ったから。


だから土日は本当は稼ぎ時なんだけど
してないんだ。



お兄さんが事ある毎にお小遣いとか
言って…修学旅行とかも行かせてくれて。
ばーちゃんのお見舞いまで
行ってくれたりして。
本当、今でもお世話になってるんだ。

頼るだけ頼っていいやーって
辞めるのも無しだと思うんだ。
だからこのバイトもやめない。




でも俺、ちゃんと高校卒業するから。