奈良時代。丹生山田に住む山田左衛門尉真勝白滝姫の物語。白滝姫の没後、毎年5月栗の花が落ちる頃、姫を祀った社の泉に清水が湧き出てきて、水が絶えなかったそうです。

   栗花落の井        神戸市北区山田町原野24     

栗花落の井(つゆのい)は、山田の里の原野地区にあり、山田道から車一台がかろうじて通れる道を入ってゆくと、柵(さく)に囲まれて一宇のお堂がある。そのきれいに整備された小径をたどると、白滝姫の伝説を記した立て札があり、そのお堂の下が「栗花落の井」です。

丹生山田の住人で、矢田部郡の郡司(律令制の地方官)である山田左衛門尉真勝(やまださえもんのじょうさねかつ)は、奈良で宮仕えをしているとき右大臣藤原豊成の二女白滝姫に恋をしました。身分違いの困難な恋でしたが、淳仁天皇(じゅんにん、758-764年)自らの斡旋により二人は夫婦となり、真勝白滝姫を丹生山田の里に連れ帰りました。

しかし、結婚3年にして子どもひとりを残し姫は亡くなってしまいます。真勝は邸内に白滝姫を祀る弁財天の堂を建てました。それからのち姫が亡くなった5月、「栗の花が落ちる」梅雨のころになると堂の前の泉から清水が湧き、旱天の日も絶えることはありませんでした。それより真勝は姓を「栗花落(つゆ)」と改め、池を「栗花落の井」と呼んでいます。

毎年五月、栗の花の落ちる頃、社の前の池に清水が湧き出て、旱天(ひでり)でも水の絶えることがなかったという。
それより姓を「栗花落(つゆ)」と改め、池を「栗花落の井」と名付けたという。
真勝から白滝姫に送った恋歌
水無月の 稲葉の末もこかるるに 山田に落ちよ白滝の水
白滝姫から真勝への返歌
雲たにも かからぬ峰の白滝を さのみな恋ひそ 山田をの子よ
   ~次回を お楽しみに では またね~