子供の頃、私は蕎麦アレルギーで、「緑のたぬき」すら食べることができなかった。周囲のみんなが美味そうに蕎麦を食べている中、私は一人、蕎麦屋だったらカツ丼、大晦日はラーメン。私が育った盛岡は蕎麦が有名で、わんこそばを知らない人は少ないのではなかろうか。そんな環境の中、私は蕎麦を食べるのが夢だった・・・・・・。しかし、四十代になって、ひょんなことから、自分の蕎麦アレルギーが消えていることに気付き、そこからは、これまでの時間を取り返すように蕎麦を食べまくった。今では週に一度は蕎麦を食べるほど、蕎麦好きである。前々から浅草に気になる蕎麦屋があった。その店の名は「翁そば」たまたま、日光に出張する日に浅草で夕飯を食べようと思い、行ってみることにした。

良い「顔」の店構え。歴史の匂いが漂う。

夕飯時を外したので、この日は空いていた。有難い。

まあ、ビールでしょうな。蕎麦屋でビールを飲まない手はない。ビールを飲みながら鰻を待つのが一番であることは譲れないが、蕎麦屋でビールというのは、学生時代の憧れでもある。メニューには蕎麦以外のものが見受けられなかった。つまり、カツ丼やら、◯◯丼、◯◯セットなどというものは無くて、かけそば550円から始まって、カレー南蛮蕎麦800円まで、蕎麦のみで構成されるメニューはとても粋な感じがした。私は評判の高い「カレー南蛮蕎麦」をいただくことにした。

なみなみのカレーあんかけ。私は元々あんかけ系が大好きで、麻婆麺や五目あんかけ焼そばも非常に好んで食べる。麺に絡まったあんが何とも言えない。

あんかけの下から姿を現した蕎麦を見て、おっと声が出た。細い通常の生蕎麦を想像していたが、何と何と、これは手打ちではないか。美味い。カレー南蛮は、単に蕎麦にカレーをかけたんじゃなくて、そういう一体化した食べ物。カレー屋の美味いカレーとは違う。ライスではなく、蕎麦に合うカレー。ご飯メニューを置かないこだわりがここにもいかんなく発揮されていた。

ちなみにネギは別皿というのも嬉しい。これが良いアクセントになって、非常に美味い。また一軒、お気に入りの店が増えてしまった。最近、また浅草に魅力を感じている。確かに観光地としてのイメージが強すぎて、私の友人を誘ってもあまり行きたがらない。観光客の人混みを歩くのが嫌なんだろうけど、何とも勿体無い話だと私は思う。私は浅草が好きだな。歩いていてワクワク感が止まらない。また行こう。翁そば、そして浅草に。