浅田太郎の妄想小説 -2ページ目

浅田太郎の妄想小説

小説 “破滅への道”

瞬く間に、ヤクザ者に囲まれていた。。。


暗がりに集まった者たちの顔を確認すると、俺がいた2代目山崎組の末端組員数人の顔が確認できたが、他の者は初めて見る顔である。


『すみませんでした!』


などと、弱音を吐くものであれば、即座に袋叩きに合うところであろうが、周囲を囲む者たちは、罵声が飛ぶだけで、殴りかかってくるわけでもない。


破門の俺を追いかけるようでは、、、


と、いうより、“田代に呼ばれて来た者たち”では、所詮こんなものであろう?


『あ~なんで、何時もこうなんだよ!俺の人生は!パトカーでも来ないかな?待てよ?背中の石垣を一発で登れれば逃げ切れるかな?』


頭の中では、アレヨコレよ、この場の打開策がクルクルと回っていたが、逃げる気配を悟られては絶対ダメだということは、過去の経験上百も承知である。



『で?お前ら何しに来たんだ?』


俺は、思いっきり余裕を持て問いただしてみた。


案の定、誰も返答する者はいない。。。


『チャンスだな?』


頭の中で、この場を逃げれるようなワクワク感が湧いてきた。


ゆっくり歩きだすと、周囲を囲っている者たちが、人ひとり通れるだけの隙間を開けた。


『もうすぐだ。ゆっくり歩いて、ゆっくり、落ち着いてな』


自分に言い聞かせ、ゆっくりとヤクザの群れの方へ歩く。


『よし、よし、あとちょっとだ』


『おい!何やってんだ!タケシを捕まえろ!』


背後から、田代が叫んだ。


すると、周囲の者たちは、我に返ったように俺の前に立ち憚った。


『そんな甘くないか?』


またもや、周囲を囲まれていた。


『おい!タケシ!今日は絶対許さいと言ったじゃないか!』


『イチイチうるせーんだよ!お前は!大体こんな面倒くさい事態作りやがって!』


数分前、逃げることばかり考えていたが、田代のセリフにカチンときて頭に血が上ると同時に俺は田代の顔面を力いっぱい殴った。


『もう終わりだな?この先もロクな事なさそうだし、もうどうなっても良いか?』


と思った。


周囲の者たちは、ピクリとの動く気配もないが、今にも飛び掛かってきそうな雰囲気である。


対峙する俺との間では、緊張感が漂う。。。


そんな緊張感の中、誰かの電話が鳴った。


『はい!あ、ご苦労様です!』


対応したヤクザの口調から、その者の兄貴分や組の幹部クラスからの電話であることは想像できる。


『はい、はい、はい、山中は目の前にいます!』


背筋をピンと伸ばして、電話の応対をしていたヤクザは、携帯電話片手に俺の前にやってきた。


『く、組長からだ』


ビビりながら、電話を俺に手渡したものは、俺がヤクザを辞める前に山崎組に入ったばかりの、部屋住みの若い衆であった。


なんだか嫌な予感である。。。。


『タケシか?なんんで東京にいるんだよ?俺との約束じゃないか?とにかくこの場は、俺が何とかするから、お前も生意気な口を利かないで、早く東京から出ていけよ』


電話の主は思った通り、2代目山崎組組長の三木雅夫であった。


半年ぶりに聞く、三木雅夫の声に懐かしさが込み上げてくる。


三木は、罵声を浴びせるわけでもなく、俺が周囲に囲まれている現況に


『参った』


と、言わんばかりに困ったように話していた。


組から離れても、俺を心配してくれている事が痛いほど理解できる。


三木は田代と電話に代わるよう若い衆へ命令し、田代や他の者が“シブシブ”俺を開放することに同意し、1時間も経過したのち、無傷で俺は難を逃れたのである。


明け方。


真紀子の部屋周辺のコンビニで、なけなしの金で缶ビール2本を買って、近くのベンチで呑んだ。


『パ~、やっぱ、久々のビールはうまいな!』


久しぶりの緊張のせいか、缶ビールがこの上なくウマい。


『さてと、会社の住所はバレたから会社へも行けないし、明日から何するかな?』


昨今、真紀子の部屋への居候生活も居心地が悪いので、用もないのに会社でヒマつぶしをしてたが、組関係者に居場所もバレタので、行くところもない。


『借金だけ片づければ、自由になるから早くサイト販売して2、300の小銭集めるか?』


と、呑気に考えていたのだが、明くる日には匠一家から、『関東所払い』の再通知が全国のヤクザへ送付されるとは知る由もなかった。


この、『所払い再通知』が原因で、この後、6度襲撃を食らうとは、夢にも思わなかったことである。


『誰だろうな…』


代々木公園付近の大通り


日中は、NHK関係者などの車やバスが行きかうこの大通りも、深夜になると車の通りもマバラだ。


人影もないバス亭ににボンヤリと座り、独りで現況を考えているけど、堅気になってボンヤリとした日々を送っているせいか、頭がうまく回らない。


務所ボケのように…


春になっても寒い夜だった。


考えても、何も思い浮かばないし、コレといって打開策もない。


『考えてても仕方ないから帰るか』


独り言をつぶやきながら、真紀子の部屋に歩いていると…


『山中さん!タケシさん!』


と、背後から俺を呼ぶ声…


『誰だろう?今夜人通りもないところで?』


あたりには車の影もない。


不審に思ったけど、背後を振り返ってみると…


『コラ!山中!探したぞ!今日こそ息の根を止めてやる!』


『お、お前は…田代…』


声の主は20年前、俺が初めて刑務所に行く原因となった初代山崎組若頭 田代健二であった。


※親分参照↓

http://ameblo.jp/wada5140/archive3-200712.html#main  


田代は、山崎組を破門後は燻った人生を送っていた。


ヤクザとして誰にも相手をされず、一度は堅気として生活を送っていたようであるが、悲しいかな?一度ヤクザとして歩んでい者が簡単に堅気の生活へ戻れる訳もなく、この頃、関西系大手組織の末端組員として、第2のヤクザ人生をスタートさせたのである。


20年も前は、組の若頭として若い衆をアゴで使い、羽振りのヤクザ生活をしていたが、当時チンピラだった俺に“ケツを捲られ”ヤクザとしての立場を失い、組からは破門になった。


燻り人生の原因を作った俺を20年もの間、恨んでいたことは想像に難しくない。


『おいよ!タケシ!手前のせいで、俺の人生ムチャクチャだよ。この年でチンピラ生活よ。手前も好き勝手やって調子よく、今更になって堅気でございますか?そんなに世の中甘くないこと、今日は骨の髄まで思い知らせてやるよ!』


燻りヤクザと対峙したら、ボンヤリとした頭がスッキリした。


ヤクザ当時、抗争に参加したような緊張感が全身を漂う。


『おい!田代!お前こそいい度胸してんじゃないか?俺はお前みたいにチンピラにケツ捲られて堅気になった根性ナシじゃないんだよ!お前こそ息の根を止めてやるよ!』


『ふん!お前甘いな?俺が一人で来たと思うか?お前のこと恨んでいる奴らに声かけてきて50人集めて来たんだよ!』


田代は、昔からハッタリ(誇張)が多かった。


見たところ、年こそおいても燻りヤクザに数十人の人間を集められる器量はないであろう?


『やれるもんならヤッテ見ろよ!』


田代の胸ぐらを掴んで、顔面を思いっきり殴り倒した。


前かがみになる田代。。。


その時、数台の高級車がバス停付近に急停車し、見たところ20名を超えるヤクザ者がドカドカと降りてきた。


『山中だ!本当にいたぞ!早く捕まえろ!』




瞬時に俺は、ヤクザ者に囲まれていた。




宮尾会長の突然の訪問から1か月が経過していた。。。。


経営は悪化するばかりで、飛躍する兆しは皆無である。


そんな状況下においても、懲りずに毎日会社へ居座る俺。


この頃になると、“自分が何をしたいか”ということを見失っていた。


とりあえず、自分が所有している『ブログサイト』というものが存在しているのだから、なんとか10円でも稼ごう、ともう反面、泥沼から這い上がる気力を失せていた。


会社で広告営業を行いながら、堅気になった自分を猛省するのである。



『やっぱりダメか・・・』


広告代理店各社に営業を行いながら、担当者がブログサイトをチェックすると、必ず見栄えの悪いバグが出る。


『山中さん。もうちょっと会員数増えてから、連絡ください。それと見栄えが悪いからバグも早く直したほうが良いよ』


毎回のことだが、担当者から腐肉を言われても、この頃ムカつく気力もない。。。


『ん~どうしたもんかな?あ!そういえば今日は俺の誕生日だったな


刑務所の独居房で過ごしているかのような、独り言と妄想に耽るばかりの毎日である。


今日もそろそろ帰ろうかな?


ボンヤリそんなことを考えていたら、珍しく会社の電話が鳴った。。。


『ん?誰かな?』


電話の主は、取引先の広告代理店であった。


『山中さん。まだ会社に残ってたんですか?不在だったらメールでの入れておこうかと思ったんですよ…。つかぬことを聞きますけど、山中さんって、ヤクザだったんですか?』


この一言でボンヤリしていた頭が、いきなりスッキリとした。


なんで、今頃そういう話になるのだ?


状況が掴めない


『突然ナンですか?どういう事なんですか?』


少し焦って、担当者へ状況を説明するように促した。


担当からの話を聞くと…



この担当者が残業してていると、営業部に1本の電話が鳴った。


相手は、名前を名乗らず、


『お宅の会社で、山中って奴の会社と取引しているだろ?悪いことは言わねーから、今日から取引やめろや。このまま取引続くと、お宅の会社も偉い目にあうぞ!』


相手は、そういうと一方的に電話を切った。


数分後、非通知で俺の『破門状』がFAXされてきたのである。


イタズラ電話だったら、気にすることもないのだが、週刊誌や映画で見るような、破門状を目にした担当者はビビった。


本当に、山中と付き合うと、ヤクザが嫌がらせに来るのではないかと…


『それなら心配ないですよ!ウチのサイトこの前。スポーツ新聞に大きく取り上げられたでしょ?それでウチにもイタズラ電話とか、営業電話とかもジャンジャン来るから、恐らく悪質ユーザーのイタズラだよ!』


少し前になるが、俺のサイトが新聞に掲載されたことがあった。


勿論、真面目に社会運動をしている会員の記事だが・・・


このような、『時の話題サイト』になるとイタズラメールや電話はよくあることだが、俺の破門状まで手に入れることが出来るのは、ヤクザはヤクザに近いものの仕業であろう。


IT業界にも、ヤクザの息がかかった会社は多々存在するが、無一文になった俺に今更嫌がらせしたってナンにもならないのにな?


様々な憶測が頭を過った。


適当な言い訳をして担当者との電話を切った後、なんだか嫌な予感が頭を過った。。。