翌週、メモを頼りに郊外の新興開発地区「ナセルシティ」にある会社へ向かった。ピラミッドに行ったことすらない。カイロ到着一ヶ月目で、アラビア語も英語もおぼつかない。それで現地ガイドの仕事をしようとしている自分。大使館で働いていた女性に「大丈夫よ」といわれ勇気をだしてみたのだが、今考えてみれば無茶な話だ。
来日一ヶ月目の日本語も英語も下手くそなエジプト人が、東京タワーすら見たことないのに、東京─日光─京都をまわる外国人観光客ツアーの現地ガイドとして、法隆寺や日光東照宮を案内し、聖徳太子の功績を、江戸の歴史を語るようなものだ。
日本人女性のマネージャーが迎え入れてくれた。
ひとことで形容すれば知的美人。微笑みながらきびきびと仕事の説明をしてくれる。垢抜けていない学生の自分とは雲泥の差だった。研修としてベテランガイドが担当する2泊3日のツアーに同行し、次からは一人で回るとのこと。
ええっ!?
いっ、一回きりですか!!??
「ガイドの説明もそうだけど、どういうルートをたどるのかもちゃんとメモしておいてね」
はっ・・はい。
「次からは一人でやらないといけないんだから」
うっ。緊張。
そして遂に研修当日。
真新しい手帳をかばんに詰め込み、ホテルに向かった。
ロビーで合流した「ベテランガイド」の女性は、自分よりずっと年上で妙に貫禄のある「アラブに長期滞在している日本人離れした女性」だった。
小心ものの田舎出身娘21歳。
その時、大先輩の貫禄、いや「迫力」にびびりまくっていた。
>>続く
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