二人の中年男女のプライベートツアーに現地ガイドとして同行した。行程にはシナイ半島も含まれていて、カイロから車で向かった。エジプト人運転手は運転席(当たり前か)、自分は助手席、二人は後部座席。ガイドがずっとしゃべり続けても相手を疲れさせてしまうし、風景を楽しむ邪魔だ。なので、たまに窓の外の風景を説明したり、カイロ生活のこぼれ話なんかをする以外は静かにしていた。
砂漠ロードに入ってしまうと運転手も飽きてくるのだろう。
片言のアラビア語が理解できる自分に話しかけてきた。
「アティコ、彼らは夫婦か?」
「いや、名前からして違うと思う」
「ということは、夫や妻が別にいるのだな?」
「そこまで聞いていないけど、仕事仲間らしいよ」
「・・・あやしい」
「でも部屋も別だし、純粋にエジプトに来たかった人同士だと思う」
「俺は信じないな」
「うーん、でも特別な関係なら部屋は一緒でしょ」
「聞いてみろよ」
「まさか!」
フロントガラスを見つめたまま、事務口調でそんな会話をしていると、後ろのお客さんが気になったのか、声をかけてきた。
「もうすぐ到着ですか?それとも何かトラブルでも?」
「あ、いえ。スケジュールの確認です。もう少しかかりそうです」
「そうでしたか。・・・アラビア語がお上手なのですね」
「そうでもないです。必要最小限の単語しか知らないので、事務的な話はできても、プライベートになると全然ついていけないんです」
「若いから、すぐに覚えるわよ」
エジプト人はポーカーフェースが得意だ。
日本人(特に自分)は、生真面目で対人小心者だな・・・としみじみ思った一年だった。
>>続く
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