とりあえず、誰かが捕まっても登っちゃえという約束だったので、みんな遠慮なくぐんぐん登ってゆく。

「・・・本当に見捨てやがったな」

女一人が下で捕まって朝を迎えるというのも物騒だ。とりあえず「英語わからない日本人」ということで、極力岩陰に隠れるルートをたどりながら登り続ける。幸い、追いかけてはこなかった。多分クレイジーな英国人とかがよく登っていて慣れっこなのだろう。

途中で腕が麻痺してきた。一段のぼったところで、体がふらっと後方に倒れそうになるのを必死で止めた。51.5度は、思った以上に急斜で、踏み外したら途中でひっかからずに下まで落ちる可能性が高い。もちろん2~3段目で命も消えるだろうからそんなに痛い思いはしないですみそうだが・・・。

やっとのことで一番上まで上ると、他の3人は一休みしていた。

「止まれとか言われていたから、捕まったかと思ったよ」
「心配してくれてありがとう。大丈夫だった」

クフ王のピラミッドの頂上は9mくらい欠けてしまっているため、その高さ分の鉄柱が中央に設置されている。そこにホテルのシーツに描いた日の丸をつけて記念撮影。夜明けが近づくともやの中に砂漠やカイロ市がうっすらと浮かぶあがってくる。最高の景色だった。そしてこれから降りていかないといけない傾斜を見下ろす。最悪の景色だ。(真っ暗闇でひたすら上を向いていたから登れたようなもので、明るい中、遠くカイロ市まで見渡せる砂漠や街の風景を見て下りるのは本当に恐怖だった)


▼後日談
日の丸はそのままにして下りてきてしまった。翌日、ヨーロッパのどこかの国の元首がやってきて、大統領に連れられてピラミッド訪問をする風景がテレビで流れた。大家さんのうちで一緒に見ていたのだが、上空からの風景に日の丸は映っていなかった。誰かがはずしてくれたのだろう。・・・本当に悪いことをしたと、今は反省している。


>>続く


▲ブログTOPに戻る