自転車に乗れば必ず汚れるもの、それはチェーンです。粘性を持つ油がチェーン内に存在する限り、チェーンの微小な削れカスや大気中のゴミを拾い、汚れとして蓄積します。チェーンは定期的に掃除するもの、というのは自転車乗りの共通見解ではあると思いますが、その掃除方法は多種多様であり、ある意味で宗教的です。今回はチェーン掃除において代表的なケミカルを比較したいと思います。

 

チェーン清掃の肝は、いかにローラー内の汚れを落とすか、という点です。一部では

「油汚れには保護効果がある!掃除は不要!ウェット系ルブどばどばで保護!」

という極論もありますが、極圧状態になるローラー内に堆積した汚れは、油膜切れやゴミによる摩耗によって、チェーンの消耗につながるのと考えるのが一般的でしょう。また、チェーンがきれいか否かで自転車の見栄えが変わるのは明白です。

 

しかし、チェーンに水は厳禁論や、マジックリンは危険説、油汚れは油でしか落とせない論など、様々な宗教的論争がTwitter(旧X)で繰り広げられています。ただ気になる点は、大半の方は成分とその特徴を理解しておらず、何が問題や危険となるのかを理解できていない、という点です。あと感情論や謎の経験論が多い。正しくケミカルについて理解し、用途にあわせ使い分けるべきだと感じています。これの火消しになるか、はたまた火に油を注ぐかは不明ですが、いずれにしてもチェーン掃除に用いられるケミカルについて真面目に考えよう、というのが今回の内容です。

 

なお間違ってたら容赦なく指摘してください。素直にごめんさいして訂正します。

 

商品画像は出しません。メーカーに直接喧嘩を吹っ掛けることになるので。

 

1.パーツクリーナー

一般にはパーツクリーナーやブレーキクリーナーなどと呼ばれるものです。成分はアルコール系溶剤と石油系溶剤が組み合わせられています。

アルコール系溶剤は、水溶性の汚れを浮かせる効果があり、エタノールが代表的に使用されます。

石油系溶剤は油汚れを浮かせる効果があり、乾く速度で成分が分類されます。

速乾性はイソヘキサン、中速乾性はシクロヘキサン、遅乾性はノナン、とそれぞれ中心となる成分が異なります。

 

そして、用いる石油成分の種類と、エタノールの配合比率を変化させることで、用途に合わせた洗浄力と乾燥速度を生み出しています。

 

メリットは油の分解力がピカイチによく、エタノールと石油系の両方が配合されているので、汚れの種類問わず使える点です。

また缶スプレータイプならガスによって直接吹き付けることができ、汚れを吹き飛ばせます。あとお手軽。

 

デメリットは、安い速乾性は、土と油が混じったチェーンにおいては、油のみが溶解し、クリーナー成分が揮発することで、肝心の金属や粉塵汚れが落ちず残ってしまう場合があります。

また、スプレータイプは広範囲の使用には不向きなので、簡単な布に吹き付けての清掃程度か、逆にチェーンを外して大量に吹き付けるのであれば効果があるでしょう。

 

2.界面活性剤

食器用洗剤といった水に溶けて泡立つタイプです。

界面活性剤とは、本来は混じりあわない水と油を繋ぐ物質です。具体的には、「液体」ー「気体」、「液体」ー「液体」といった性質の異なる物質には「界面」が存在します。洗剤に用いられるような界面活性剤には、水にも油にも馴染む性質があり、この性質を用いて、油汚れを水を用いて落せるようにするものです。体を洗う石鹸も界面活性剤の一種です。

以下に界面活性剤の種類と性質を示します。

 

自転車用の洗剤はアルカリ性が中心です。界面活性剤自体は中性ですが、これらに油を乳化するセスキ炭酸ソーダといったアルカリ剤を加えることで、油をより落せる洗剤が出来上がります。

 

メリットは単価が安く入手しやすい、水道に流せるため一般家庭でも扱いやすい点です。

 

デメリットは、金属と油が嫌う「水」を用いるため、錆を呼んだり、チェーンオイルを差すためには時間をかけて乾かす必要がある点です。

 

また、アルミニウム合金は「両性合金」であり、これはアルカリにも酸にも反応する合金で、金属表面が溶けてしまいます。

 

例えば強アルカリ性の物質として代表的な「水酸化ナトリウム」の溶液にアルミを入れると、金属のアルミは溶けて「アルミン酸ナトリウム」と「水素」になります。

 

2018年に新宿駅で起きたアルミ缶爆発事故も、缶内でアルミニウムとアルカリ液が反応し、発生した水素により缶が耐え切れず爆発したものです。 何なら缶の中身は自転車用の洗剤だったとか。

 

 

チェーンに用いられる鉄鋼は両性金属ではないですが、アルカリ環境中では水素脆化を起こし割れてしまうリスクがあります。

 

ちなみに某〇〇社(アルファベット二文字)のチェーンクリーナは強アルカリです。

汚れになじませようと吹きかけて長時間放置すれば、シマノ社クランクの強靭なアルマイト処理さえ通り越し素地を溶かし、傷から浸透しプレートさえも割ります。

あれはマジで売るのやめた方がいいのでは...

 

あとはよく聞く緑のマジ○クリンもアルカリ性です。「チェーン マジックリン」とでもTwitter(旧X)で調べたら、中途半端な構成の自転車の画像とケチで頭の悪そうな謎理論が拝めます。シマノも「アルカリや酸性の洗剤はつかっちゃだめ!やるなら中性洗剤よ!」とはっきりと書いています。僕は人の自転車のチェーンが切れようが知ったことないので好きに使えばいいと思ってますが、自分や預かった自転車にはリスキーなので使えません。一気に脆化しなくても、ちょっとした傷を起点に少しずつひび割れが広がります。また、アルカリ剤は水洗いしても内部までは落としきれず、チェーンオイルをはじいたり、先の脆化を進めたりするため、危険かどうかよりリスキーだと思うので、メーカーも否定する要素なので、自己責任でやるべきだと思います。

 

※花王さんに対しては決して一切何か言うつもりはありません。

 だって本来、レンジフードとかの食用油の汚れ落とし用だし。

 工業用油の洗浄用とは一切明記されてないから。

 

おっと こんな時間に 誰だろう。

 

3.フィルタークリーナー

本来はエンジンのエアフィルターを掃除するためのケミカルですが、チェーンにも流用することが可能です。なんちゃらアルファもこれに属する?

 

フィルタークリーナーは遅乾性の石油系溶剤に、乳化剤を加えることで、水で洗い流せるようになっています。

WAK○'sだと ポリオキシエチレンアルキルエーテルです。よくある台所用洗剤と同じ乳化剤。

 

乳化剤は界面活性剤と同じ役割を果たします。混ざりあわない他の物質をつなげる役割で、界面活性剤というジャンルの中に乳化剤があります。で、工業においては界面活性剤の中でも油と水を均一に溶かすものを乳化剤という感じのようです。ちなみに、食品だと食べれるものが乳化剤、食べれないのが界面活性剤らしいです。

 

パーツクリーナとの違いは、乳化剤が含まれているか、すなわち水で洗えるかそうでないかが違いのようです。洗えるほうがフィルタークリーナ。

 

なので、フィルタークリーナーはまず油汚れに塗布し、乳化したものを水で洗い流します。

 

メリットは素材への攻撃性が少ない点です。また乾燥しにくいため、時間をかけて汚れを落とせます。

デメリットは、水を使うことです。理由は界面活性剤に同じ。また、完全にクリーナー成分を水で流さないと、チェーンオイルを溶かしてしまいます。

 

4.フォーミング系

勝手に名付けていますが、某WAK〇’Sのフォーミングマルチクリーナーに代表されるタイプです。アレの原理は不明です。なぜ泡立つかもわからないし。特許とかなにかあるのか、信頼できそうな情報が見当たりませんでした。

 

成分は界面活性剤、アルカリ剤、アルコール類が主成分のようです。確かに成分としてはマルチに含まれていますが、泡立つ仕組みの成分はどこ調べても書いてないです。吹き付けた後は乳化して弱アルカリ性の水になるようです。

 

吹いて浮き上がったものを、タオルで吹き上げるだけできれいになります。

そのため、水道水や臭い洗浄剤を洗浄できるのがメリットです。よって屋内でも利用可能。

 

デメリットは単価が高い点ですが、効率や時間、環境的なメリットを考えると仕方ないものかなと感じます。

 

貧乏暇なしというように、貧乏人は時間を掛けるしかありません。

 

5.灯油、石油系溶剤(洗油)

灯油にぶっこんでしまう方法です。油は油でしか落とせないという信念を持った者がやる方法です。
ただ油といっても、チェーンクリーナのようなギトギトした油ではなく、燃料としての揮発性を持つような油です。
 
灯油はいうまでもなくガソリンスタンドで売っている灯油です。石油ストーブを使う方ならおなじみ。
 
また石油系溶剤は、ベンジン、ホワイトガソリン、ミネラルスピリット、灯油などをベースにした溶剤です。
機械の洗浄剤として選定する場合は、有機物質(ゴムが含まれるかなど)を判断して成分が決まります。
 

エンジンの洗浄等も、灯油漬けが多いので、金属への負担の少なさや汚れ落としという点においては確実な方法です。

 

また、○○(アルファベット2文字)社が出しているパワーゾル / クイックゾルも、石油系溶剤です。

 

メリットは、単価が安い、アルコール系に比べ揮発性が低いため、時間をかけて溶解できるので油汚れがよく落ちる、金属への影響が少ない、といった点です。

デメリットは、廃油の処理が面倒、乾燥/揮発に時間がかかる、匂いが超きつい、火気厳禁である、といった点です。

特に、匂いに関しては、ガソリンスタンドの独特な匂いと同じと考えてもらえばわかりやすいと思います。なので、屋内では使えない、使いたくない程度には臭く、かなり上級者向けの方法です。

 

6.合成洗油

合成洗油とは、かつて灯油が代表的であった油性用洗油に置き換わるものです。粉末状のものが多く、これは水に溶かして使用します。

メリットは、大量に使用する場合は結果的に単価が安くなります。また保管が可能で、繰り返しの使用が可能です。また、水に溶けるため、火災の心配がなく、下水に流せる点です。

 

デメリットはお湯を使用しないと洗浄効果が落ちる点です。また水を使う...理由はもうわかるね。

 

最近やけにTwitter(旧X)で話題のG〇T〇Lのチェーンディグリーザーの素は、合成洗油のジャンルに入ります。

 

ルカリ基材って言ってるから、中身はアルカリウォッシュとかの素となるセスキ炭酸ソーダなのでは…。

アルカリ系の洗浄剤って温度を上げると洗浄効果が上がるよ!って良く言うからそういうことでしょ。ね。

 

おっと、こんな時間に 誰だろう。

 

7.アルコール系

 
エタノール/メタノール/アセトンのあれです。理系、特に化学系や物質・材料系の方なら一度は使うでしょう。
アルコール系は、親水性と親油性両方を兼ね備えているため、濃度の調整がしやすいという点から、化学系の脱脂用途でよく用いられます。
 
しかし、特にアセトンはネイルリムーバーとしての用途からわかるように、塗装を剝いでしまうリスクがあります。また、有機溶剤中毒予防規則で規制される程度には危険です。
 
揮発性が高く、肌につくと直接何か起こるわけではありませんが、スッと水分が奪われて冷たい感触がし、やがて血が回るのか急激に熱く感じます。
 
また、ある一定量を超えるアルコール系溶剤は、 危険物取扱者乙種第4類、いわゆる乙4がの資格が必要となります。その程度には危険です。
 
なので、アセトンをベースにしたディグリーザーというものはあまり聞きません。1項のパーツクリーナーも、中身はエタノールが多いです。
 
ちなみに、みんな嫌いなカサカサ動くGにアセトンぶっかけは、下手な殺虫剤より効果があります。おそらくG表面の油が溶かされることで気門がふさがれ、かつ体温が急激に低下することによって死に至るのだと思います。
アセトンをともにGの出るトイレへと向かう様子

まとめ

一言にディグリーザーといっても、成分や分解の仕組みが異なり、使い分けが必要であるということは明確です。

この記事ですべて書けたとは思っていませんが、なんとなく理解してくだされば幸いです。

 

最後にひとつ。

間違いがあったら容赦なく指摘してください。

素直にごめんなさいして訂正します。