空が壊れちゃった日に
岡靖が「イケナイコトカイ」でセックスと歌って随分と経つのだけど、貴方に小指を噛まれて痛いという事で納得していた僕の親の世代を知る身としては随分と痒い所に手を届かせないと誰も納得できない時風になったもんだと思ったが、朝からず~っと待っていた貴方とのセックスを真っ正直に歌う岡靖って素敵だとは感じた。今はあいみょんがサラッとまだ眠たくないのセックスと歌ってしまう。眠たくないからという二次候補であれセックスと少女が歌うのもまぁそういう風がこの世界に吹いているという事なのだろうか。さて雨、雨、台風で雨。 その後もずっと雨で空は壊れてしまった様だ。それでも僕はやっぱり犬達と唐比の平原に立っているのだけど、物好きと言うか風変り人間がこの場所を好むのだろうか。次から次へと人が訪れる。 僕のワンボックスカーのハッチバックを跳ね上げて雨宿りをしながら妙齢のお姉ちゃんが買って来て呉れたコーヒーを飲む。コレって豪雨だよね?此処じゃヒールは歩き難いだろ。 会社で虐められてるのか。 そうか、どうせ長崎式だ。大した事ないんだ気にすんな。陰口と言えば良いのか長崎の人間は人の噂話が好きな様だ。 色々な土地で仕事をしたり生活した経験を持つ人にはこの長崎式陰口が堪えるらしい。他者を批判する事でその瞬間自分が優位に立つというテクニックはあんまり多用すると長い目で見ると本人が大きな損をするのだけど、中毒者の視野は狭いものだ。会社の昼休みにご飯に行くのに「待って、私も行く~!」と追い掛けるのは自分が居ない空間で自分の悪口を言われたくないからなのだけど、そんなもの言わせて置けば良いだけなのが何故分からないのか。 どうだって良いんだ長崎式。開放された空間で変なおじさんがこういう事を言えばどうした訳だか凄くヒットするみたいで、暗い顔も明るくなる。 がんばれ、気にするな。他にやる事は沢山あるんだ。そうだった。僕は台風で壊された柵を直さなくてはならないのだった。幸いと言えば良いのか柵本体のダメージはそれ程大きいとは言えないので、それなりの手直しでまた使用可能だ。使える部材と捨てる部材の分類をしていると、またコーヒーを持って人が訪ねて来る。今度は残念ながらおじさんだ。 自分のところもそれなりに被害がある筈なのに人の心配をして来て呉れる訳だ。こういう風に台風って確かに災難ではあるのだけど、壊れるものは壊れて新しくなって行くと思えば理に叶っていると言える。僕自身は自然相手にノーと言われたのだから、イエスを引き出せば良い訳で物凄く納得がいく話でもある。やってくれるよなとは思うが、どこかに爽快感さえある。 この嵐は馬鹿のツボにドストライクにハマったのだ。 昨日の日曜はまぁまぁの天気で様子見のお客さんが来るかも知れないので、朝から急ピッチでランの一部を復旧させた。金太郎パパが来て呉れてウロウロ子取りをしてくれた。 どうにも僕は気が小さいもので、人が心配して何か手伝いに来るなんて言われるとソワソワしてしまう。嬉しいのだけど落ち着かなくて不安にもなってしまう。夕方には雨になってテントを出してみんなで雨宿りをして楽しかった。皆さん何かの役に立ちたいと集まったお客さんだ。 なんの事は無く普段のランの風景だった。面積の大きいアジリティ施設の面の復旧はまだ時間が掛かる。 ざっと復旧で良いのなら僕一人で一日あればやってしまえる様に考えて作ったものだが、年々嵐の規模が大きくなっているし、雨の降り方も想定出来る悪い結末の最大級を考える時期なのだと思う。 だから時間を掛ける心算だ。 未知数だった湿原での柵のマテリアルとしての耐久性も見えて来た。 多分だけどこの世界でもかなり変わった事で四苦八苦出来るのは僕にとって僥倖と言ってしまって構わないのだと思う。大粒の雨のテントの中で復旧資金をお客さんみんなで出すという話になった。 実は今回色んな所から資金提供のお話を頂いたものだ。 しかし、金だけの問題で言えば皆様から頂いている入場料で充分に賄えるのです。 利益がねぇ、なんて意見もありますがそもそも利益なんか考えるだけの頭が無いのだから、そんな問題は存在しない。 スカッと行こうぜ。しかしながら考えたのだけど、貧弱な僕の銀行通帳の数字なのだけどその数字そのままと言えばそうでもないという事が解った。 どうもこうもならんと思えば色々と頭を下げて廻れば、カラコカラフィールドの一つや二つ訳もなくすぐに建つのだ。 さてでは何処に頭を下げるかと空想してみたら、今までの蓄積総動員で100ヶ所近くは廻れると思う。 なんと僕は自分でも知らないうちに宝くじに当たっている様だ。 勿体なくて使う気はないけどね。