あつみちゃん、という
ちょっとファンキーな
親戚のおばちゃんが居た。


あつみちゃんは、わたしの母と
従姉妹同士だったが、


わたしからすれば、
何にあたるのか分からない。


でも、とっても親しみやすいキャラクターに

あつみちゃん♡」と、呼んでいた。


山口県・下関市、関門海峡を臨む
高台に建つミッション系の幼稚園、

あつみちゃん
は、そこの
園長先生をしていた。


下関は、わたしの地元から
アクセスがあまりよくなく、


あつみちゃん
も、
とっても活動家だったので、


小さい頃に会って来て以来、
年賀状や
電話でやりとりする程度で、
ずいぶんと
ご無沙汰をしていた。


わたしが社会人になり、
週末を利用して
近場への旅行に
はまっていたとき、


いっしょに旅をたのしんでいた友人が、

「下関へふぐを食べに行きたい」

と言ったので、


それじゃあ、親戚のあつみちゃん

尋ねて行こう、ということに。


友人のおかげで、わたしは

あつみちゃんと十年以上ぶりの

再会を果たすことができた。



アンティークに囲まれた
お洒落なお部屋に、


お店でいただくと、
いったいいくらになるのか?

想像するのが怖いくらいの

ふぐのフルコースを用意して、


あつみちゃんは、わたしたちを

熱烈歓迎してくれた。


そして、幼稚園でのエピソードを

たくさんたくさん、おもしろおかしく

語ってくれた。


『子供の発想は、自由で面白い』


終始、そういった内容のお話しを

聞かせてくれた。


中でも、一番印象に残っているのが、


― ぴっかりくん



ぴっかりくん”とは、幼稚園バスの

扉付近によく現れるピカピカのこと。


種を明かしてしまうと、
運転手さんの腕時計に

日光が反射したものが、


運転手さんが、ハンドルを切るたび

ピカピカと、扉のあたりを照らすのだ。


子供たちは、そのピカピカが、

幼稚園バスに乗り合わせている生き物、

はたまた自分たちの仲間だと思い込んで、


親しみを込めて“ぴっかりくん”と、

呼んでいたそうだ。


ぴっかりくんは、大人の事情からすれば、

雨の日はもちろん、太陽の光が少ない
曇りの日も、
幼稚園バスに
姿を見せることはない。


子供たちは、そういった日に

ぴっかりくんが、バスに乗っていないことを

心配して、あつみちゃん


「えんちょうせんせー、ぴっかりくんのおうちに

電話して、聞いてあげてよー」


と、とても可愛らしい
おねだりをしてくたそうだ。


あつみちゃんも、ヨシヨシ、電話してみるかと、

携帯を片手に、あたかもぴっかりくん

お父さんと会話しているように


「もしもし?ぴっかりくんのお父さんですか?

 今日、ぴっかりくんが来ていないものだから

 みんなが心配していてですね...
 ああ、今日は雨だからお休みですか。」


といったことをして、
子供たちを安心させていたという。



その日、絶品のふぐをいただきながら

とても充実した時間を過ごせたのはもちろん、


あつみちゃんと再会できたことが

本当に嬉しかった。それは、わたしだけではなく、


あつみちゃんも、すっかり大人になったわたしと

再会できたことをとても喜んでくれていた。


また頻繁に会いたいな~と、思いながら、

連絡したり、期間が空いたりを
繰り返していたある日のこと。


仕事中に、母から着信が。

わたしが仕事中で、電話に出られないのは

知っているはずなのに、なぜ?


と、思っていたら今度は、

「至急、連絡くれ。あつみちゃん危篤。」

のメールが。


全く意味が分からなかった。

すぐに電話をしたら、

母が涙声で事情を語ってくれた。


それから程なくして、あつみちゃん

天国へと旅立った。


下関へお別れを言いに行くことが
できなかったけれど、


最後にあつみちゃんと会ったときは、

ぴっかりくんの話をしてくれた、そのとき。

夜遅くまで、いっしょに大笑いをしたときだった。


だから、わたしの中であつみちゃん

とっても素敵な笑顔のままなのだ。


あぁ、もしかしたら

あつみちゃんが、ぴっかりくんになって、

時々、わたしのことを
照らしてくれているのかもしれない。


毎年、この時期になると思い出すのである。