生年月日 昭和10年生・同年没

犬種 カラフト犬

性別 牝

地域 南樺太→東京府

飼主 秦一郎氏

 

昭和10年夏、南樺太でカラフト犬の調査にあたった日本犬保存会・秦一郎理事の愛犬。残念ながら東京移入直後に病死しています。
……狂犬病対策により樺太から犬の持ち出しは禁じられていたのですが、堂々と密航していたんですね。
 
 
一胎仔から長短二様の被毛を有する仔犬が生れる例は、エスキモオ犬に於てもやはり變りはないが、樺太犬に於ても、この系統のものには長短兩様の被毛の犬が同腹から生れる。
現に私が白濱のアイヌコタンで見附けて、苦心連れ歸つたピリカといふ生後二ヶ月ばかりの牝犬(惜しいかな、歸宅後十日目にデイステンパーを發し、斃れた)は、全身枯草色をしたエスキモオ系の長毛種であつたが、一つ腹から生れたといふ兄弟は、一見アイヌ犬程度の短毛種であつた。
 
秦一郎「樺太犬私見(昭和11年)」より
 
 
そしてこれがピリカの姉弟犬。長毛型カラフト犬と短毛型カラフト犬はルーツが異なる犬だったのか、それとも共通の先祖から分岐したのか。
同胎犬ながら長毛型と短毛型に分かれていたピリカ姉弟は、カラフト犬のルーツを考える上で貴重なデータとなるはずでした。