ドーベルマンの進路檢討の座談會

出席者

相澤晃

武久孝雄

中込政重

野呂横行

古屋千秋

横井準一郎

白木正光

 

【牡は作りにくい】
野呂
私は今迄餘りに妥協性のなかつたことを自覺して來た。この間もある大衆雑誌を讀んでつく〃感じた。
横井
野呂君の從來の言説は、犬に就いての説は何時も大抵よいが、行政的には餘りに理想に走つて現實性に乏しい。すべて實際には一歩一歩前進して行かねばならぬ。
十年先きのことが入れられない時は、多數決できめたことに從はねばならぬが、野呂君にはそれが出來ぬ。
古屋
私は犬界のことは犬を持つてゐなければ發言權はないと思つてゐる。これから皆で犬を作ることが最急務だ。
牝は出來るが牡のよいものは却々出來ない。
横井
私も犬を飼つて會得したことが一つある。牡が出來ないことです。
古屋
仔犬が出來ても牡は分讓せず、いゝものが出來ねばソツと始末して仕舞ふ位にしたらよからう。私は牝犬によいものがあればジヨツクをかけて貰ひ、牡の仔犬を一匹貰へばよい。
それも先方がいゝのを一頭取つた、その次のものを三十日目に貰へばよい。
武久
三十日目と云ふのは何か根據があるのですか。
古屋
いや何もない。十五日目でも三十五日目でもよいが、餘り早いと古屋がごまかしたと云はれるといやだからです。
私の經驗では生れた時が一番よい犬は、最後まで一番よい。
六ヶ月頃でどうかう云はれるのは寄生蟲その他故障の起つた場合だ。
 

(次回に続く)