「犬界よ正しく伸びよ・犬界時事檢討の集ひ」より
出席者
帝国軍用犬協会理事 有坂光威騎兵大尉
帝国軍用犬協会副会長 坂本健吉騎兵少将(予備役)
帝国軍用犬協会理事 永田秀吉
エアデール協会理事長 中元銀弘
日本犬保存会理事 平岩米吉
主催 白木正光
【犬に學べ】
平岩
だから私は犬に學べといふのです。犬は決してそんなことをしません。
犬もやらぬやうな嚙み合ひをやるのは、飼つてゐる犬に耻ずべきです。愼み深い人は遠慮してやらないと云ふが、多少考へる人は馬鹿らしくて、相手になどなつてゐられない。口を利かなくなります。
有坂
爭ふと下劣になるので、遣らぬ人もゐます。それだけ進歩したのですね。
しかし相手にしないからとて、いゝ氣になつて嚙み付くのは、全くよくない。
平岩
みんな鬪犬を飼つてゐるやうだ(笑聲)
中元
角立ててやることはない―。
坂本
さうです。
永田
言論機關として多くの人の目に觸れる雑誌、その雑誌の人も遣り方を變へると効果がある從來のと思ふ。
坂本
犬の團體も色々あるが、團體はもつといくら出來てもよいと思ふ。そして夫等の團體が融和して「自分の方ではかういふ經驗をしたが、見てくれ」「いや、それはもう試驗濟みだ。その結果を得たら、かうした方がよい」などといふ具合に交際してもよいではないか。
お互に何もしないでゐるのは、餘りに度量が狭過ぎる。同じ趣味なら、一つ一緒に仕事をしようではないか、となるのも然る可きこと。
又一緒になれないが、お互に連絡をとつてやらうなどとなつても差支へないではないか。たゞ敬遠したり、惡口を云ひ合つたり―、こんなことは絶對に避けるべきだ。
有坂
古ひ遣り方です。
永田
雑誌でよくやつたものだ。