徳田和兵衛は夙に密獵を爲すの噂さあるより、清末駐在小川巡査内々之が發見に勤めつゝありしが、去月十九日午后二時頃、同巡査は大河内の原野に立ち入りつゝありしに上衣に木綿半天を着し銃を携帶し畜犬二頭を放逐して狩獵するものあるを發見したりしが、此地は勝山井田より約二十丁余の奥山にて密獵の好場所なるより、件の男は巡査なることを知り一目散に逃走したれば、何條逃して堪るべきと追走して捕へたるに、まがふかたなき徳田和兵衛にして管打製二連發の銃身中火藥に散彈を入れ雷管を以て何時にても發火するを得べくなし實彈二發所持し、正しく無鑑札狩獵者なりしこと發見し、銃器等を押収したりと云ふ。

「狩獵法違反者取締」より

 

 

……ご主人が逮捕されて、同行していた猟犬たちはどうなったのでしょうか?

山間部での密猟取締はとても困難で、私服警官やハンターに変装した捜査員を巡回させるのが精一杯。

猟友会等の情報網をたよりに目星をつけたエリアで、不審者を張り込む方法が効果的だったようです(猟場で出会った密猟者同士が獲物を自慢し合っていたら、その中の一人が潜入捜査員で芋づる式に全員逮捕されたケースもありました)。