這次の支那事變に軍用犬が活躍して居る事實は軍民共に認識するところであるのに、軍用犬に對する需要の聲の一向に高まらないのは不思議であるとして居るものが尠くない。
其結果は軍用犬の末路が近いたやうに謂ふものがあるのは、今更ながら我が國民の一部に輕率性の存するに驚かざるを得ない。應召の爲め犬の世話をする壮青年の手が不足して居ることが目下犬に關心を持つものが尠く見られる原因の一であるので、滿洲事件や上海事件の時でも其後に於て軍用犬熱を高めた事實に徴すれば、今次の事變の終焉後に於ては一世の人氣が軍用犬に集まり、牽いては一般の犬種も亦た飼育慾を唆ることは必然であると思ふ。
時に依つて多少の盛衰はあるにしても、人間が地球の表面に生存する限り、犬は必ず彼と共に在るに相違ない。と僕は確信するものである。
 

熊本・KA生『犬界の動向』より

 

これが書かれた頃、第二次上海事変を終えた日本軍は南京侵攻を開始。戦線の急拡大によって、内地から出征するシェパードも激増してゆきます。