先日ひさしぶりに実家へ帰ったときのこと。

昼飯の最中に親父殿へ電話がかかってきて、うんうんと話を聞いていた父が「まあ、そう気を落さずに」「俺が交渉してみるから」「新年早々死ぬとか言うなよ」などと穏やかざる台詞をスマホに向かって語り始めたワケです。

何かヤバそうだぞ。

 

通話を終え、食卓の気マズイ空気を察したのか、聞いてもいないのに解説タイムがスタート。

電話の主は父の友人で、事業が傾いたところにコロナ禍が直撃、さらに体調を崩して入院し、同族経営だったので息子にも頼れず、自宅を売却して何とかしようとしたら億単位の想定が安値で買い叩かれて万策尽き、もう生きる気力もないとのだとか。

不幸の連鎖に言葉もありません。

「羽振りが良かった頃を忘れられないんだろうな、かわいそうに」と嘆息した父は「お前は長生きしろよ」と傍らでおすそ分けを待っている愛犬の頭を撫でました。

その彼も今年で15歳。人間で換算したら70代ですか。

最近は大好きだったオモチャに見向きもしなくなり、視力や足腰も衰えてきたようです。新陳代謝も衰え、今冬は換毛すらしませんでした。

部屋飼いと予防薬のためフィラリア感染は免れ、食欲旺盛なのが救いです。

愛犬と別れの日が近づきつつある不安。両親の老いへの不安。コロナ禍ではオノレの死についても向きあう事となりました(喘息もちなので呼吸困難への恐怖は人一倍あります)。

その時が来たら、自分はどうすればよいのか。今のうちにやっておくべき事は何だろう?

……などと考えていたら、いつの間にか私の膝にアゴを乗せた愛犬が上目遣いで食い物よこせアピールをしています。

今日の昼飯は海鮮丼なのでお前にやるオカズは無いのだ。魚嫌いだろ?

と語りかけながら、この穏やかな日常がずっと続けばいいのにと思いました。無理なんですけどね。