山本自警主任が、半歳のあいだ丹精をこめて仕上げたセパードが姿を消してしまつた。

「三日飼へば飼主を忘れぬといふのに、やつぱり舶來犬は駄目だねエ」とこぼし乍ら捜し廻つてゐる。夫婦仲が良すぎるので、犬がリンキして出て行つたのかも知れませんね。

 

『あたま・くさめ・奉天(昭和12年)』より