國境省として重要なる本省の軍犬資源は未知數にして、康徳九年八月滿洲軍用犬協會牡丹江支部設立と共に其れが計劃は樹立せられありたるも、實行に至らずして今日に及べり。

本年四月二十一日より(三文字欠落)迄六日間全市に施せられたる狂犬病豫防注射を好機とし、之が調査方を前記(※満洲軍用犬協会)牡丹江支部より依頼を受けたるを以て、之に同道して調査を了せり。
實數は別表の通りなるも、以下少しく其の概況を説明せんとす。
 
【別表】
 
一、大多數の軍用適種犬飼育者は犬に對す關心少なく、其の飼育管理も又適當ならず。犬は概ね細格にして種族性を疑ふもの、強度の褪色、四肢の長きもの、作業慾の缺乏したるもの等見受けられる。之は無計劃蕃殖なるは勿論、飼育に於て放任主義に由來したるものと思料す。
二、協會登録犬は誠に僅少にして、大多數は未登録なり。
三、注射を受けざるもの即ち當日連行せざるもの相當數ある見込。
四、軍用適種犬全部シエパード犬なり。之を要するに其の内容は充實したるものとは言ひ難く、今後に於ける飼育者に對する各種の善導は急を要するものと認められたり。
然して當市に於ける實數は當日連行せざるものを約二十頭推定し、結局一〇〇頭内外の見込なり。
尚、本調査に依り蒲野府畜産股長及び支部所属大原訓練士の絶大なる盡力に依り、極めて圓滑に完了を見たるものにして、特に附言して感謝の意を表す。
 
山本豊春 康徳10年4月27日