生年月日 昭和9年頃

犬種 日本犬雑種

性別 牡

地域 福井縣

飼主 内山進氏

 

いまは亡き主人の墓へ日参する忠犬モリ公のいぢらしい話。

福井縣大野中學校内山進氏は大野町清水區の新邸で愛兒代りに日本犬雑種の雄犬(三歳)を飼つてゐたが、内山氏は去る七日愛犬を遺して急死し、九日砂山洞雲寺墓所に埋葬された。

主人を亡くしたモリ公は校葬の日から主人の姿を求めて故校長の實家―清瀧神社司の十時家に生きクン〃と啼きながら家内をかけめぐり、時には故校長が散歩した砂山へかけのぼりなどして、二、三日間は歸宅せなかつたが、ある日早朝故校長の實母が墓参されたところ元氣のないモリ公が地下に眠る校長の盛土新らしい墓所に數ヶ所の穴を設け、鼻を突込んではクンクンと悲しげな啼聲をして新らしい墓標をぐる〃と廻り去らうともせない。雨に濡れたモリ公のいぢらしい姿に老母も感泣されて、モリ公を内山家に連れ戻せられたが、校長生前當時の元氣はなく、夜間は忠實に家守をなし、必ず朝早く校長の墓所へ駈出し、悲しい聲で叫び廻り、淋しげに戻る姿は町民に涙を絞らせ一つの教訓材料とされてゐる。

『忠犬の墓参り』より 昭和12年