1、昭和十六年度犬界に於ける最大の印象

シエパードが非常に全盛になり、優秀なものが各地に存在する様になつた事。

 

2、昭和十七年の貴犬舎の計劃

優秀狆の蕃殖。

 

3、犬界の新體制的發展の具體的方法手段等

何時か研究誌に發表した様に畜犬の統制をなして、駄犬を排し純粋犬のみの改良を計る事。紙面に制限あり充分の説明をし得ないが、官民合同の團體を結成し、先づ各家庭を往訪、飼育犬を調査し、雑種犬の生産を中止せしめ、若し畜主の承認あらば雑種犬と純粋犬とを交換し、右團體の監督の下に全日本の畜犬の生産をなさしめる。斯くすれば數年後には純粋犬のみとなり、中には優秀なるものも出で、畜犬國富を確立し得ると思惟する。

尚ほ食料に就いても成可く人間の食物を侵害しない様にする様各人が注意するを要する。

 

東京 日本コリー犬協会 伊藤治郎 『前年度の犬界印象その他』より

 

ブルドッグやボルゾイやコリーのブリーダーだった伊藤さんですが、シェパードや狆の話ばっかりですね。「数年後の畜犬国富」どころか3年後には日本犬界が崩壊するとは、誰も想像すらしていなかったのでしょう。