東京で鳴らしたセカンド・ラツソーが朝鮮京城の福田又一氏の犬舎に迎へられた。福田氏は軍犬界にはまだ新人で、こう云ふ人が今後大に名犬作出に努力して呉れるのは頼母しいと思つてゐた矢先、又復朝鮮金州長水邑の柳東彦氏が突如東上して、神戸森本氏のマント・フオム・ビルホーフ牡を始め、東京内田氏の昨年度帝國優勝犬イルマ・フオム・ヘルムホルツ、カロラ・フオム・アナステイニ牝を一挙に買占めて行つた。

朝鮮にはこのほか以前から全羅北道裡里日出町に土井伊太郎氏があつて、獨逸産の名シエパード犬を多數抱擁し、先達の戸山學校の第三回軍用犬展覧會には朝鮮からわざ〃愛犬を出陳した程の氣の入れ方である。

これらの人々の軍用犬に對する熱誠は、必らずや朝鮮の軍犬界を刺戟し、近來急激な發展向上の途にある同地の斯界に更に拍車をかけることであらう。

 

『シエパード犬界トピツク三題』より