生年月日 不明
犬種 シェパード
性別 牡
地域 東京市
地域 内堀誠氏

来日前はドイツで勤務した警察犬であり、日本シェパード犬協会内堀氏の愛犬。昭和11年の警視庁直轄警察犬復活において重要な役割を果たしました。

犬
昭和11年の広告より

「新宿第一劇場脇の大泉旅館主で、同所の地主の氏はカール・ミユラー氏の推薦で伯林警察署で四年間も探偵犬として活躍したアツカ・フオン・ウルヒツヒゼーを輸入。三月中旬に横濱着の豫定」

「警察犬陣の建設と共に、警察犬の偉力を一般警察官に認識させることは、その實現を期する上に最も急務であるとして、その大任が内堀誠氏のアツカ號によつて七月廿五日午後一時から武蔵野電車沿線豊島園に於て行はれた。
集つた警察官は警視廳獣醫課、鑑識課、防犯課の人々及び戸塚、板橋署の約百餘名、その環境の中でアツカ號はミユラー氏(※カール・ミュラー訓練士)」指導のもとに捜索、水中訓練等いともあざやかに行つた(いずれも『人の噂』より 昭和11年)」

この前夜、上野動物園で黒ヒョウが脱走(詳細は上野動物園黒豹脱走事件 の記事にて)。
日本シェパード犬協会や帝国軍用犬協会の記録によると、アッカは25日の実演を中断してヒョウの捜索活動に従事した筈なのですが、「人の噂」では実演したことになっていますね。
まあ、日付を間違えたんでしょう。

警視庁の伊東壽警部が、新聞記者から黒ヒョウ脱走の情報を聞いたのは7月25日11時30分頃のこと。伊東警部は、13時からJSVによるアッカ号の訓練実演を豊島園で視察する予定でした。

「然しながら、午後一時迄には幾何も時刻が残つてゐないので、各方面の延期通達は荒木氏と共に汗だくの體で、それ丈りでなく見學の意氣込みを沮喪せしめる點に誠に相済まぬ責任感を何うする事も出來ませんでした。
取敢へず板橋警察署を通じて豊島園へアツカ號が到着したら實演の延期と上野への應援を依頼し、他方内堀氏宅へは自動車を飛ばして連絡を圖り、同時に荒木氏から帝犬の應援方を御願ひしたところ入江閣下が協會本部に御見えになつた際とて御快諾の報に接したのでありました。
捜索犬の集合場所は上野山下巡査派出所と打合せを了し、私は野犬運搬用の特別装置のある貨物自動車にシートを用意して現場に向かつたのです。それは萬一黒豹が公園の老樹間に出没して猛威を振ふ場合を予想したから臨機應変の戰闘準備を必要と認めたからでした。
私が上野山下巡査派出所に着いたのは午後零時十分頃でしたが、未だ豹は發見されて居りませんでした。同派出所に出張警戒中の某警部は、『動物園で署長が待つてゐるから直ちに現場へ行つて下さい』とのことでした。
私は犬が到着したら、直ぐ現場へ向けて呉れる様依頼して動物園に向ひました。
途中の警戒は實に物々しい限りでした。平常はあれ程散策人で賑ふ園内も一般の通行は全く禁じられて深緑の静かな葉蔭には警戒の警察官の白服姿が散在するのみで、一種言葉に表すことの出来ない凄みを帯びてゐるのでありました」
警視庁伊東壽警部『黒豹捜索陣観戰記』より 昭和11年

 

このアッカ號ですが、クロヒョウ事件の翌年に死亡します。

 

「一昨年春内掘氏が獨逸から輸入した警察犬アツカ號は、ニユース映畫に實演に警察犬の妙技を發揮して東都犬界に盛名をはせたが、舊臘二十日心臓麻痺で死んだ」