最近のエアデール界の状態を見るに、少なくも此の犬種に関心を以てゐるものにとつて、洵に遼々たるものあるを感ずる。
本部展の僅か六頭の出陳頭数、又最近に於けるエアデールは仔犬の皆無に等しい状態等、エアデールを愛好し、今後に多くを期待してゐるものにとつては、さびしき極みであると云はなければならない。
その原因を検討して見ると、一番大きなる障碍になりつつあるところは、之は聊かその言が過ぎるかも知れぬが、此の犬種の愛好家たる人々の中、割合に多くが、所謂自己満足に陥つて、真に犬種の為めその将来に期待せんとすべく、努力が足りないと見られるのである。
今田荘一氏を始め指導者と目さるべき人々が、厳健なる體躯と勝れた性能を有する本種を軍用犬としてその多くを役立たしむべく、声を大にして呼び居るに拘らず、之に對して答える何物もないと云ふ事は、我が國エアデール飼育者の熱意の足らぬものであると云はれても仕方がないのであつて、犬種の将来のため等しく奮起を望みたいものである。
此の発展に関しては、その数を増す事、そのサイズを大にする事等があるが、要はエアデール飼育者の全ての熱意に掛つてゐるものであると云ひ得るものである。

笛木生「最近のエアデール界」より 昭和17年