里田原三
京都の展覧會の感じはどうでした。
京野兵右衛門
各地のものがあつて、まち〃で見悪かつたですね。
里田
全く紀州の犬も居れば東北の犬も居る。四國の犬も居る。土地で生れた犬、或は三重産の犬も居るといふ風で、各地から集つて來ますから、かう云ふ展覧會は犬を見るに實に難儀ですね。
京野
一般に支部展に審査に行きますと、先づ第一に粒が揃はない。それに犬そのものも餘り良いのは出ない。中には圖抜けて良いのが有りますが、一般に悪い。だから第一審で餘り振り落してしまふと最後には採る犬が無くなります。
其の點、総支部展や本部展になると殆んど優劣がなく、今度の関西展なんか實によく粒が揃つてゐた。
渡邊肇
あれでは本部展より関西展をやつた方が成功ですよ。
里田
何と云つても展覧會は秋は本部展、春は関西展でせうね。
渡邊
関西展の中型は實にいゝ……。
京野
此の頃は日本犬も却々良くなつて第一審通過が違つて來た。又飼育者自身も日本犬そのものが分るようになつて來て居り、総支部展や本部展に出陳する人は大分考へて居る様に見受けられます。昔のやうな事はありません。却々自重して選衝して持つて來て居りますからね。
里田
地方展で優秀な犬ですね。今各地に支部がありますから、その優秀な犬をもう一度本部展に揃へて見直す事は、審査員としても必要な事ですな。又會員にしても犬に對する正しい認識を植ゑつける上に於いて大変いゝ勉強になると思ひます。
さう云ふ意味で各地の優秀犬は是非共本部展とか総支部展には出して戴きたいものですな。

日本犬協會「各地日本犬の批判座談會」より 昭和12年