鉄道運輸規程は去月十日逓信省令第三十六號を以て公布せられたり。
該規程中動物運送に関する條項を挙ぐれば左の如し。

第七章 動物運送

第七十條
手荷物車を以て運送するに適する小動物は、旅客列車(混合列車亦同じ)を以て運送の便を開くべし。
第七十一條
旅客の携帯する小動物は、旅客の請求に因り旅客と同一列車を以て運送すべし。
第七十二條

小動物は其の到達停車場に於て即時に之が引取を為すべし。之が引取を為さざるときは鉄道は之を飼養するの義務なし。
第七十三條
旅客の携帯する犬を除く外小動物は逸出の虞なき様籠、網若くは箱等に納れ託送すべし。
第七十四條

旅客列車(混合列車亦同じ)に依る小動物の運送に附ては、前各條に定ある場合を除く外小荷物運送に関する規定を準用す。
第七十五條
鉄道は動物の運搬に付附添人を請求することを得。
附添人の乗車賃は下等旅客運賃の定額を超過することを得ず。
附添人は動物を監視し、驛長の認諾を受くるに非ざれば他車に転乗することを得ず。
附添人は藁、枯草等燃え易き物品あるときは喫煙具及発火し易き物品を車中に携帯することを得ず。
第七十六條
猛獣を託送せむとする者は逸走其の他危害防止の為充分なる覊絆を施すべし。
第七十七條
動物を託送せむとする者は豫め其の申込を為し、列車出発時刻より少くとも一時間前迄に之を停車場に送致すべし。
鉄道が動物運送列車を定めて公告したるときは託送人は前項の申込を為すことを要せず。
第七十八條
動物の積卸は鉄道の請求あるときは託送人、受取人に於て之を担當し、且之に要する材料を準備すべし。
第七十九條
小動物の外動物は到達の通知を受けたる後、速に之が引取を為すべし。之が引取を為さざるときは鉄道は之を飼養するの義務なし。
第八十條

託送の際、價格を明告し鉄道の請求に因り増賃金を支拂ひたる場合の外、鉄道の悪意又は重大なる過失に因らざる獣類の紛失損傷に附ては、左に掲ぐる金額以内に限り賠償を請求することを得。
一馬 一頭に付 金七十圓
一乳牛 同 金百圓
一牛 同 金三十圓
一犢(こうし) 同 金十圓
一羊 同 金十圓
一豚 同 金五圓
一山羊 同 金十圓
一其の他の獣類 同 金五圓
第八十一條
託送の際、明告せられたる價格前條制限額を超ゆるときは鉄道は其の超過額に對し左に掲ぐる割合以内に於て増賃金を請求することを得。
一 五十哩未満 價格金十圓に付(金十圓未満亦同じ) 金十銭
一 五十哩以上百哩未満 同 金十五銭
一 百哩以上二百哩未満 同 金二十五銭
一 二百哩以上は二百哩を増す毎に 同 金五銭
前項の規定に準拠し増賃銀を定むるときは監督官廳に届出づべし。
増賃金は停車場中見易き場所に掲示することを要す。
第八十二條
動物の運送には本章に別段の定ある場合を除く外、第八章の規定を準用す。

以上です