犬に名をつけるに就て、いろ〃考へて見た。
ジヨンとかポチとか云ふ名は頗る平凡であつて、近頃の様に畜犬界も発展し犬の雑誌などが出て居る以上、少しく高尚な名を附してはどうだらう。
獨逸では千八百八十三年五月二十六日に伯林で獨逸犬種改良協會、ニムロツド協會、メリルニブルグの山林協會、獨逸猟犬協會、フルニカルク猟友會、ドレスデン養犬協會、クレーセンド養犬協會、ウエルデンブルグ協會、粗毛犬協會其他畜犬に関する團體は協議會を開いて獨逸養犬協會なるものを組織し、前記各團體はこれが支部として存置し、犬名を左の如く一定せり。
犬名は短く一綴を良として、縦例多くも二綴を超ゆる事を許さずして、牡犬は下に子音を附し、母音を附する事を許さず(但しaeの二字は此の限に非ず)、又牝犬は下に母音を附し、子音を附する事は絶對に許さざる事となる。
愛犬家の参考として記載する事にしたのである。
普通日本で犬に附て居る名で、いろ〃面白いものもある。
ジヨン、ポチが多いのでは両横綱であらうが、私の知つて居るだけの名を列記して見る。
マル、シロ、クロ、ブチ、五郎、次郎、太郎、権兵衛、福、カメ、野郎、小僧、ヤマ、カマ、タンゴ、チビ、ポス、キチ、ライ、ブラ、タチ、リユウ、コロ、ハナ、ジヤキ、ロバ、ベル、ジヨツプ、ジヨネ、チス、チー、カー、ピス、モー、タベ、ダンベ、フヲツクス、ロー、コマ、ブルテリー、ハマ、チマ、権九郎、吾作、パール、大和、権六、ムク、チヨツペー、チヨ、チヨビ、ベヤー、ツル、デブ、ペス(以下略)
日本畜犬協會 大正15年


犬

大正2年、市町村長宛に提出されたペットの飼育廃止届。残念ながら飼育届は見つからず。
手書きでOKだったんですね。


僕等の喜びは譬へやうもない。
何ですつて、僕等に希望は無いかつて?
有りますとも實に大有りです。有難い、それでは遠慮なく申し上げますよ。

さあ、何から先に申しませうか。
さうだ、先づ第一に僕等の家、即ち皆さんの云ふ犬小屋に就いての希望から申し上げませう。
大抵の愛犬家と云はれて居る人達でも犬舎に對しては随分冷淡であります。真に僕達を愛するならば、僕達のためには最も大切な家について今少、心を用ひて貰ひたいものです。
その設計なども何も知らない大工任せにせず、よく吟味してやつて貰ひたいものです。


犬
こちらは鑑札紛失届。アレって役所へ返却していたんですか。

・先づ犬舎から
第一に犬舎の入口から申しませう。


田中千禄「ポチの告白」より 大正9年

(現在作成中)