【8月度】
山海関税関
康徳六年八月十一日、豆油の密輸出せんとする者ありとの密告を受けたる北水門監視勤務所高橋監吏は、同日午後九時三十分夫役常殿英、監視犬ベツチナ號を帯 同し、長城線第二十三破壊口付近に潜伏監視中、翌八月十二日午後一時四十分に至り密輸者らしき十数名の一團が本邦より同破壊口に向ふを発見したるを以て、 之が近接を待ちて高橋監吏は停止を命じたるを以て直ちにベツチナ號に襲撃を命ずると共に之を追跡せるに、彼の一團はベツチナ號の襲撃に周章狼狽し、携帯物 件を現場に放棄し中国側へ四散逃走せり。
依て左記物件を押収せり。

押収品の品目数量及価格
税関名 山海関
月日 八、一二 
品目 石油
数量 四缶
価格(円) 一六、八○
使用犬 ベツチナ
使用の状態 併用協力

月日 八、一二 
品目 豆油
数量 二十缶
価格(円) 一二六、○○
使用犬 ベツチナ
使用の状態 併用協力

税関合計 一四二、○○円