ウィペット(ホイペット)は英国で作出された品種。
サイトハウンドとしての目的以外に、ドッグレースやウサギ殺しゲームなどで使われました。
ウサギ殺しゲームとは、犬が噛み殺したウサギの数を競う遊戯のことです。
イギリスは動物愛護の先進国ですが、それを「動物愛護精神溢れる国」と勘違いしてはいけません。
もしそうなら、RSPCA(英国王立動物愛護協会)のような組織を作る必要はないでしょう?
動物虐待行為の横行という現状を憂い、早期から対処していたのがイギリスだったのです。

話を戻しますが、ウィペットの来日時期も例によって詳細
不明。
「まさか戦前にはいないだろう」と思って調べたら、大正時代の史料にしっかり写っておりました。

英国での犬種認定から僅か20年ちょっとで来日していたとは……。

帝國ノ犬達-ウィペット
樋口金三郎氏が飼育していたホイペット「グレー」號。明治44年生れ。
大正2年撮影

下の詩を読むと、日本のウィペットは昭和になっても希少種のままだった様ですね。

立ち止れば 二頭の狆の涼しげな眼が いとしくも我を凝むる。
雪白のマルテイスの毛に 抱くひとの指のダイアに 燃ゆる入陽よ
そのテリア 曳える博多の姐さんの その襟あしといづれが白き
「まあ可愛い」「ワイヤーもいゝね」「有名なベンスキンの仔よ」「高價だらうな」
日本に未だ四頭しか 居ぬと云ふホイペツト その犬も抱けば頬を舐めにき
吠えくるひ ベンチの柱ぬけむとす グレートデーンよ何を怒るや
芝犬は良し 我が曳けば尾を巻かず 抱けど馴染まず…… そを愛ほしむ

中村榮一「犬展のぞ記」より 昭和10年