原作 吉川英治
監督 山本嘉治郎
撮影 唐澤弘光
音樂 紙恭輔
美術 北猛夫

出演
陽洋先生…… 丸山定夫
於兎…… 伊藤薫
忠犬ハチ公…… 忠犬ハチ公(本犬出演)

忠犬ハチ公が出演した、という一点のみで有名な映画「あるぷす大将」。
今回は、ハチが登場する場面をちょっとだけご紹介します。

帝國ノ犬達-あるぷす大将
『あるぷす大將』スチルより、ハチ公と於兎。

山を追はれた陽洋先生(丸山定夫)とアルプス大將の於兎(伊藤薫)は東京に走つた。
山だしの二人にとつては東京は正に驚異の都であつた。
フラリと通りかかつたのが澁谷驛の前。

「フーム、犬の銅像があるわい」
とハチ公の忠義振りを読んで感心し
「あゝ、見上げたものぢやで。人も及ばぬ尊い行ひぢや。この銅像を見なさい。實に立派な心掛けぢやないか」
ふりむくと、あるぷす大將、往來の眞ん中で、本物のハチ公の前にしやがみこんで頭を撫ぜてゐる。
「これ、於兎。そんなムク犬をいぢるでない。それよりこの銅像を御覧なさい。實に立派な犬ぢやないか」
「先生、こつちが本物ですよ」
「ハーン、さうか。成程……」

帝國ノ犬達-あるぷす大将
ハチ公の銅像を眺める陽洋先生(カバンを提げている人)

人々に感動を与えた物語の中の忠犬ハチ公と、パッとしない老犬だった現実世界のハチ。
両者の対比が面白いですね。