當地南秋中央猟友會は、會長武田隆造氏、副會長奈良圓次氏を始め各役員諸氏の多大なる努力に依り益々発達の道程にあり。
密猟防止等の方法に就ては相當の考慮を拂へるも何分避遠の地にあつては一駐在所に對し二三ケ村の廣大なる區域を担當の任に當れる為め巡視の度数も尠なく、之が取締は各猟友團體と官憲との圓滑なる連絡に依りて相當の成績を治め得べく、狩猟家は密猟者を發見する場合、情實或は自己の利害関係等に因らず、我が猟界覚醒のために其手続を為すことは最も必要事と思はる。

保護蕃殖の方策としては、免許税の引上げ、禁猟區の設定等も亦最善の方法にして猟區の設置も適當なれど、多額の費用を要し維持費等の関係上、地方に依りては實行困難に陥ることあり。
甲種猟獲は現下の状勢に鑑み禁止するを可とすべく又雌鳥の捕獲禁止は、例へ法令を以て之を定むるとするも狩猟道徳の徹底せざる今日果して其實行の可能なるや否やは頗る疑問に属する難事である。

猟犬に對して鉄道當局の考慮と理解を求めたいことは、猟犬の取扱ひを今少しく親切にして貰ひたい。
狩猟家と猟犬は出猟時に於ては不離の関係に有るのは言を俟たぬ所で、狩猟を離れて猟犬を要せず、猟犬を離れて狩猟は不可能である。
この理解なき鉄道就業員は殆んど生物と言ふ観念なく恰も厄介荷物の如く取扱ひ、甚だしきは故意に犬箱の儘、横に縦に転々せしめつゝ運搬せるが如き事實は常に目撃する所である。
輸送賃金に就ても近距離の往復に二圓を要するは實に不廉である。

南秋中央猟友會「秋田縣より」より 大正13年