「犬の首」といわれて思い浮かべるのは何でしょうか。
犬神家の一族(漫画版)?ゴヤの絵画?中には、ソ連のウラジーミル・デミコフを挙げる人もいるでしょう。
切断した犬の頭部を他の犬の肩に移植した実験で有名なデミコフ。
実は、彼の前にも同じような研究をしていた人がいました。

「モスコーの薬化学研究所で行つた實験では、胴體のない首だけの犬が或程度の運動をしたそうである。
それは先づ、犬を麻酔させて注意深く徐々に頭を切断し、血液だけを器械で頭へ循環させて置く。
そうすると麻酔から醒めて眼を瞬きし、鼻や唇にふれると反応し、且つ激しい刺激を与へると皿の上に頭を載せてゐるのが難しい位に動く。
又、時々口を開かうとしたり、歯をむき出そうとしたり、咆える真似もする。
電燈を点ずると、瞳孔を収縮して瞬きをする。口内へ少量の酢を入れると舌でそれを吐き出そうとし、口中に泡を生じた。
美味しいチーズを与へると之を嚥下する。
以上の實験から見て、頭だけを或時間、生かして置くことは可能である。
即ち人の死に際し首を切り取つて東部に血液を環流させれば少時間生き永へるから、遠い所から急いで駈け付ける親戚知人にも生きてゐる内に通へると云ふものである」

「科学雑誌」に掲載された、野島謙蔵氏の論文より 1936年

子供の頃に読んだ、アレクサンドル・ベリャーエフの「生きている首」とか怖かったなあ。
培養液中に摘出された脳が、切断面の激痛に耐えかねて静かに絶叫し続ける「生きている脳(筒井康隆作品)」も怖かった。
でも、実際にこんな事をやってのける科学者が一番怖いです。