エアデール・テリアをタイトルに、英亞汀留・丁利亞と書いたのは何も理由があつた訳ではなく、イングリツシユを英吉利と書き、アメリカを亜米利加と書くように、エアデール・テリアをヂヤーナリストに書かせると、恐らく斯う書くだらうと戯筆したまでのことである。

だが英亞汀留・丁利亞の字から受ける感じでは、目に慣れない故か、どうもピンと来ないので、これはやはりエアデール・テリアと片仮名で書いた方がどうやらいゝらしい。
またこの片仮名の文字の使ひ方が誠にヤカマシイので、以前はエヤデル・テリヤ、エーヤデール・テリア、エヤデール・テリヤ等種々の書き方をしたものだが、 AIREDALE TERRIERの原語の発音に、最も近い合理的な文字の使ひ方に統一した方がよいと謂ふので、我々の属する日本エアデールテリア協會では、先年邦語で言ひ 表す場合エアデール・テリアに決めて、一方この文字の使ひ方まで宣伝したものなので、最近ではどうやらほとんどこれになつたらしい。
またエアデール・テリアはエアデールではなく、厳にエアデール・テリアなので、このエアデール、エアデール・テリアのテリアを省くか否かに就いて、先年英 吉利で大論争が起つたことがあり、遂にエアデール・テリア派が勝利を占めて、ケネルクラブ(英吉利)は舊來の儘エアデール・テリアを採用したのである。
又日本では一般にテリア種をテリヤと呼び慣らされてゐるため、我々がテリアと書いて原稿等を印刷に廻すと、それが全部テリヤに誤植されてゐることがあり、校正の際ヤをアに幾度訂正しても。不相変御親切にもテリヤと刷り上つて来たりして、やかましいエアデールテリアの文字の使い方まで宣伝してゐる協會の係員が、この印刷物を眺めて渋面を作る圖など、所謂微苦笑とか謂ふものだらう。
茲ではエアデールと書いてゆくが、エアデール・テリアと書いてゐる積りと御承知願ひたい。

町田兵一「英亞汀留・丁利亞随筆」より 昭和14年