沖縄の「シーサー」というと、古民家の屋根の置物として、

沖縄に観光に行った人は見たことがあるはず。

「シーサー」とは沖縄方言の「獅子」で、

守り神になって屋根に上がった霊獣神、元々はライオン。


古代オリエントでは、百獣の王・ライオンを王の権力や聖なるものの象徴として

宮殿や神殿などに飾った。
その代表が人間の頭とライオンの胴体を持つスフィンクス。

これがシルクロードを経て、実際のライオンを見たことがない地域に伝わり、
中国では「獅子」になり、日本は中国から朝鮮半島経由で伝来し

「獅子」や「狛犬」に、琉球では「シーサー」、

シンガポールでは「マーライオン」になった。


琉球王国は中国の冊封国で13~15世紀に伝来したといわれている。


「シーサー」は守り神になって屋根に上がり、

日本では「狛犬」が邪気を祓う守護獣として神社を守った。
(神社では口を閉じているのが「狛犬」、

 口を開けているのが「獅子」で一対に置かれていることが多い。
 「シーサー」も一対である場合は口が開いているのが「オス」、

 口を閉じているのが「メス」)。

 屋根に上がるのは魔物を捕え、災いから守る「オス」といわれている)

「シーサー」は琉球王朝時代から続く

伝統的な家の魔除け・守り神みたいに思えるけど、

一般家屋に普及したのは明治以降。


沖縄の民家の赤瓦屋根は白い漆喰(しっくい)で瓦と瓦の隙間を

塗り固めているので強烈な台風の暴風にも耐えられるが、

こういう建物が一般家庭に普及したのは明治時代に入ってから。


瓦職人が余った漆喰で「シーサー」を作って屋根に載せていった。

沖縄戦前は、本島でも過疎地域はまだ茅葺(かやぶき)屋根の家が多く、
「台風で吹き飛ばされたりした家があれば、

 部落民が総出で柱の組み立てや茅葺を手伝っていた」
と北部の古老から聞いたことがある。

そういう地域では部落を見下ろす高台や入口に

「シーサー」が設置されているらしい。


「シーサー」が家屋の屋根に設置されているのに対し、

住宅地の路地で見かけるのが「石敢當(いしがんとう、せきかんどう)」。


「シーサー」も「石敢當」も「STOP the 魔除け」。


「シーサー」は魔物が家の門からの侵入を阻止する最後の守護神だけど、
「石敢當」は道を直進する魔物を阻止するため、

道の突き当り(T字路なども)に設置されている石碑、石柱。

「石敢當」は古代中国の勇敢な武将「石氏」の「石」に、

「無敵」を表す「敢當」を合わせた邪気祓いのオブジェ。


沖縄だけでなく、鹿児島県や台湾、香港、シンガポール、マレーシアにも

あるらしいけど沖縄以外では見た記憶がない。
犬がマーキングするあたりに設置されているから見落としていたのかな。

今の時代では「石敢當」は車除け、

「シーサー」は突然ピンポーンとやって来る訪問勧誘や

ルフィ除けのおまじないとして自分で念を込めて作るのもいいかもね。