GWの5月2日(火曜日)、東京ドームで行われたプロ野球の

巨人VSヤクルト戦で、ヤクルトの山田哲人選手が

6回表にレフトスタンドに今シーズン3号本塁打を放った。

このホームランボールを最初に拾い上げたのは小学生の男児だったが、

それを奪い取ったオッサンがいて、
その場面がテレビ中継されていたのだ。

そのオッサンは、
「なんか山田哲人のホームランボール 捕らせていただきました」
と自身のTwitterで嬉しそうに報告。
アカウント名が「もっちー」。

アイコンがTwitter、インスタと同じだったことで、

たちまちFacebookも特定され
そのアカウントには「もっちー」の本名が。

Twitterには多くの過去画像もあり、

甥と野球観戦に行った投稿もあったことから、
彼も
「甥のためにホームランボールが欲しかった?」
という意見もあるけど…。

男児のホームランボールを奪い取るのはあまりにも大人げない。

当然のことながら彼のTwitterはたちまち大炎上し、

彼はあわててTwitterアカウントを削除したがあとの祭り。
今でもFacebookは閲覧できる状態らしい。

私は見たくもないし見ないけど、

大騒ぎのネットでは「もっちー」画像などが拡散し

彼の年齢や住所、マンションの家賃、家族と同居して独身だとか

派遣社員とかも判明してしまった。
怖い世の中だね。

 

金運を失い破産してゲッソリ痩せた秋元康、

あるいは特殊詐欺事件でフィリピンで捕まったメガネルフィが

刑期を終えてシャバに出てきたみたいな、そんな冴えない感じの男。

 

「人の噂も七十五日」

というけど、ヤクルトファンの怒りを買った「もっちー」は、

今後3年くらいは野球場観戦は危険過ぎて行けないはず。

Twitterを削除したことから、彼の自宅付近に直接出向く人もいそうだし、

派遣会社や派遣先に苦情電話をしまくる人も出そうで
警察沙汰になるようなトラブルがなければいいけどね。

 

仕事先まで特定されるのは時間の問題だけど、そこに苦情電話が多ければ

彼は一時的に職を失う可能性だってあるはずだ。

ホームランボールを盗られた男児は特定されていないが、

せっかく拾ったホームランボールを大人に横取りされた男児の

精神的ショックは計り知れない。


ヤクルトは球団HPなどでこの男児に名乗り出るように案内を出して、

選手のサイン入りボールやユニフォームを贈呈するとかやってあげればいいのに。

 

この男児はスワローズのユニフォームを着ていたヤクルトファンなんだから。

(横取りしたオッサンも熱烈なヤクルトファンでユニフォーム着用だった)

 

男児に何らかの救済措置があれば、

「禍を転じて福と為す」

男児だってますますヤクルトファンになるはずだ。



新型コロナウイルスの感染拡大以降、

行政の自粛要請に応じない人や店舗へ攻撃する風潮が強まった。

世の中の秩序を保とうという「正義感」から、

「自粛警察」「マスク警察」「帰省警察」

などと呼ばれる人たちが現れ
マスクを着用していない人を見つけてはどなりつけたり、

時短営業に応じない店を中傷する貼り紙をしたり、

県外ナンバーの車を傷つけたり、東京からの帰省に目くじら立てたり、
ウレタン製マスクを認めず不織布マスクの着用を強いたり、

店舗などに入る前に消毒をしているかどうかを監視したりするなど

全国的に嫌がらせが相次いだ。

 

今回の「もっちー」事件はこれを思い出した。

日本人は縄文時代後期から農耕民族として

「村」という共同体を作り田畑を耕して生活してきた。

村の掟や規律を破れば「村八分」となり「村」から締め出されてしまう。


そのため、周りと共同歩調し、足並みを揃えることが重要視され、

日本人は「個性」は尊重されず金太郎飴のように

「皆一緒」「出る杭は打たれる」という価値観を形成してきた。


日本人、特に田舎では「世間体」を気にするのもこういう背景があるから。

少数意見を持つ人に対して、周囲の多くの人と同じように考え行動するよう、

 暗黙のうちに強制することを「同調圧力(同調バイアス)」というが、
同調圧力が悪く働いてしまうと、わずかな違いを見つけて攻撃したり、

異論を排除する方向に働いてしまう。



「間違っているから、教えてあげよう」
という正義感の根底には、
「~すべきだ」「~であるはず」

という期待や、

信念が裏切られた「怒り」や「憤り」の感情があるというが、
「コロナ禍でマスクを着用しないのはおかしい」

「感染拡大時期の帰省は止めるべきだ」
という怒りや憤りが、

そのまま「マスク警察」や「帰省警察」を生んでいるわけではない。

「夫婦げんかでイライラ」

「仕事や勉強がうまくいかずムシャクシャ」

「上司に認められず不満」

「給料が安くて腹立たしい」

…、
発散されない怒りを抱えた人が「正義」の名の下にはけ口を見つけただけで
「自粛警察」「マスク警察」「帰省警察」
は正義の味方や月光仮面のようなヒーローではなく、

八つ当たりや憂さ晴らし、うっぷん晴らし、
ありがた迷惑の要らぬお節介に他ならない。

その証拠に、

「自粛警察」「マスク警察」「帰省警察」

らには恐怖や迷惑の対象として疎(うと)まれるが、
称賛されることはほとんどない。
子どものいじめっ子と同じ構図なのだ。



WBCの日本VSオーストラリア戦の初回、
大谷翔平選手が右翼席の看板を直撃する3ランを放ち、
福島県の女子大生が貴重なホームランボールを拾い上げた。


隣の人が「ボールを撮影したい」と言うと女子大生は躊躇なくボールを渡した。


ボールは次々に横の観客に手渡され、

やがて価値あるボールは女子大生に無事に戻ってきて美談と報じられた。

小学生の男児からホームランボールを奪い取った「もっちー」は猛省し、
そういう優しさや心のゆとりを見習うべきだと思う。

 

MLBではホームランやファールボールを取った大人が、

近くの子どもに自然に渡しているのをよく見かける。

そうあってほしいよね。

同時に、ネットで「もっちー」を叩く人たちも、

怒りを発散させるターゲットを探すより
徳を積む大谷翔平選手を見習い自らの価値観を高める努力をすべきだと思うよ。