息子君の成人式のスーツと

そのうち必要になるだろう礼服を

全部そろえてやった。

お直しが12月11日に出来上がります

そういう事だった。

 

どうしためぐりあわせか

妹の義父が亡くなった。

妹に息子君の礼服の事を言うと

「最初に使うのがうちの旦那のお父さんの

葬式か・・・」と言っていたが

結局、葬式は純然たる家族葬で

息子夫婦とその孫まででひっそり行うから

大丈夫と言う事だった。

 

僕は亡くなった義弟のお父さんと

話をしたのは1度しかない。

話をしていると「ビルゲイツが結婚式にきた」とか

そんな話をしてくれてなんて誇大妄想狂な人なんだ

と感じた思い出がある。

 

それは彼の弟さんの話だけれど

「俺が働いたお金であいつを浪人させてやって

東北大学に入れてやったんだ」と言っていた。

一体何のことかピンと来なかった

息子君のそろばん塾のそばに

本当に偶然妹おばちゃん夫婦と義弟の両親の家があって

見かけたので挨拶がてらに聞いていた。

 

数年後、上野の国立技術博物館に息子君の夏休みの

課題をやっつけるために行ったとき

博物館の解説本を記念に買って帰る。

驚いたことにあの時の話は本当であったことを知った。

マイクロプロセッサーの開発者だった。

周囲の人からはノーベル賞を取るんじゃないか

とまで言われていたそうだ。

 

彼も昔、放送研究所で教鞭を取っていて

国立天文台の所長をやっている教え子が何人もいたという。

そこをやめて自分で会社を興し

電波関係の施設の施工で遠くはリビアまで

仕事をしに行っていた。

 

技術は大したものがあると思うが

育てた社員はみんな大きい会社に引き抜かれて

また昨今は放送は電波よりケーブルが主流になり

仕事が減って行ったという。

 

日頃使っているパソコンも

彼が援助した弟の技術の系譜に連なっていると思うと

彼の人生も人類の進歩にささやかな貢献をしたんだなと

羨ましく思う。