息子くん
予備校の手続きをどうしてこんな間際になって
言い出すんだと
昨日僕と言い争いになった時
高校時代は本当にいいことなかった
ばーちゃんも死んじゃったしなんて
ばーちゃんの事を言い出したので
ばーちゃんをそんなに慕ってたんだなと
ホロっとした。
53万円は無事駿台に届いて
今日から通えることになった。
ばーちゃんが臨終のとき
看護婦さんに面会が許されて
一人ずつ最後のお別れに行った。
その時の思い出を朝駅まで送る車の中で話す。
「僕はあのときお前がしっかり勉強をやる様になって
成績もよくなってきたんだよって
口から出まかせだけど言ったんだよ
そしたらばーちゃん頷いてた。」
あの時は最後に会いに行ったのが息子くんだ。
看護婦さんにお孫さんが合いに来てくれましたよと
教えてもらうとばーちゃんはにこっと微笑んだそうだ。
それから間もなく意識は無くなってしまったという
迎えに行った時
息子くんは
「今ばーちゃんを見たんだ」と信じられないようなことを言う
「えっと思ってもう一度見返してみるともういなかった」って
「ちゃんと予備校に行けるようになって
うれしくなって会いに来たんだろ」と
僕は言う。
気のせいだろうけど
本当にばーちゃんが好きだったんだなと思った。
もう何年か長生きしてくれたら。
息子くんの晴れ姿を見る事が出来たかもしれないのに。
88で死んじゃったんだから女性の平均寿命だね。
「おじいちゃんは何歳なんですか?」と
今日来た男の子が言う。バイクの免許の講習が早くに終わったから
うちの店に来たという。
「もう90だよ。元気だよね。
今朝もスピーカーでどこそこの78歳の男性が
行方不明になったって放送してたよね。
そう言う人もいるんだから、まだ現役で働いてるのは
スゴイよね」と言うと
「おじいちゃんがそう言う事になったらすぐに見つかると思いますよ」
と言う。
どうしてだろう?と思いながら聞いていると
「ここのお店には小さいころからお世話になったから
みんな一斉に探してくれると思いますよ」と言う事だった。
これには僕がホロッとした