貸してくれと頼みこまれて
貸してやったお金の返済として
その人は金は返せないけど
集めたアルミ缶で返すという。
こういう父親のしりぬぐいで
僕はいつもせっせとアルミ缶をリサイクル工場に
持って行っている。
負債の残額はわずかになって来たんだけど
こういう時に振って湧いたのが新型コロナだ
景気が一気に冷え込んで
アルミの値段も底
だから僕は「しばらく持って行かないよ!」と言っていた
しかし、「かなりたまってしまった」という事で
もうそろそろ持って行ってやらなきゃ
自分が苦しむことになる
アルミ缶を軽トラの荷台に積むのが
苦役なのだ
どうして俺はこんな事やってんのかねと
いつも自問自答しながら一袋一袋積んでいく。
結局今回もかなり期間を開けてしまった事が裏目に出て、
劣化して敗れた袋から散乱した缶を
延々と新しい袋に詰め直すという
余計な仕事ができた
それにしばらく通っていなかったから
倉庫までの通路の鉄扉につけた鎖が
開けられなくなった。
そうやってアルミ缶を運んでいると
国会中継のテレビの音が流れてくる。
7万いくらかの夕飯をおごってもらっていいな
あの人の年齢は僕と同じだ
大学が一緒なので卒業アルバムを見た
でも載ってなかったから
現役か一浪君だね
しかし結局辞職になると思ったね。
かわいそうだけど
午前中に終わらせようと思っていたのに
散乱した缶を拾い集めるという
想定外の仕事や
通路の鉄扉の鎖を解くのに
信じられない時間がかかったために
また一日仕事になっちゃったね。