猫の影がベランダの手摺りに飛び移るのが見えた。

さっき出してやったアカヤが帰って来たのだ。

 

「アカヤが帰ってきた」と

テーブルで印刷物を呼んでいるばーちゃんに言う。

 

窓の外でアカヤがニャーっと鳴く。

僕がほらと言って近づいて行く。

アカヤが待っているのがわかる。

 

「聞いていてご覧。お礼を言うよ」と言って

入れるくらいの隙間を開けてやる。

 

アカヤがのどを鳴らしながらゴロにゃんと言って入ってくる。

 

開けてやるのにあまり時間を掛けると

何にも言わずに入ってくることが多い。

 

「もっと早く開けてください

待たせないでください

お礼なんて言いませんよ」って具合だ。

 

僕が「人間にも言葉が通じていると思ってるんだよ」と言う。

ばーちゃんもそうだろうねと同意する。

 

「俺がアカヤは人間だ人間だって言うからその気になっちゃったんだね」

そうと言うとばーちゃんは笑った。